第37話 休み明けの学校

 週が明けての学校。久しぶりにゲームから離れてみて、一時はどうなることかと思ったが意外と有意義な休みが過ごせて俺は満足していた。


「おはよう葉山」

「おはようございます。葉山さん」

「ああ、おはよう」


 こういつも通り挨拶してくる二人も、心なしか元気がいい気がする。

 先週はゲームの名前を出してくるくらい、目に見えるほど疲れ切っていたのに。


 いつも通りに朝の短い時間が終わり、HRが始まった。


「来週から三者面談が始まるからしっかりと親に報告しておくように。これがその時間表だ」

  

 先生はそう言って紙を配ってくる。


 三者面談か。ということはもうすぐ夏休みじゃないか。今回は勉強を頑張っていたので三者面談なんて何も苦じゃない。

 夏休みは何をしようか。やっぱりゲーム三昧かな。夏はイベントが多くなるし、プレイ時間も増えそうだよなぁ。


 そんなことを考えているといつの間にかHRが終わっていたらしい。


 周りがどんどんと騒がしくなっていった。

 その騒々しさの中こちらに歩いてくる人影が見えた。


「ちょっとだけ時間いい?」

「あ、ああ沙織、いいぞ」


 まだ少しも慣れない名前呼びだが、恥ずかしがったら負けなのでできるだけ自然に言うことを心がけて返事をした。


 そしてそのまま、前を歩く沙織の後をつけるように教室を出た。


「なんだ話って?」


 この時間の休みは短いため、さっそく本題に入った。


「司のことは信用してるけど、一応誰にも言ってないかなって」

「ああ、なんだそんな事か」

「で、どうなの?」

「どうって言うわけないだろ」

「本当?」

「ああ、本当だって」


 そんなに心配しなくてもいいのに。別に言いふらすなんて真似しないし。

 そんな楽観的な俺に対して、沙織はホッと息をついて安心していた。まぁ、沙織にとっては結構重要な問題だろうな。彩花と鏡花も結構怖がってたし。


「話はそれだけ?」

「まぁ重要な話はそれだけなんだけど……あ、そうだ。司って今何かハマってるゲームある?」

「ゲーム? いきなりだな」

「最近何か無いかなって探してたのよ。暇つぶしできそうなやつ」

「うーん……。最近だとFTOかな。フェアリーテイルオンライン」

 

 逆に言えばゲームはこれだけしかやってないって言っても過言じゃ無いしな。

 暇つぶしにも最適だ。


「…………あー、聞いたことあるわ」


 沙織はなぜか少し気まずそうな表情を見せた。


「もしかしてやったことあった?」

「ま、まぁちょっとだけね。最近はそこまでだけど」

「あーそうなのか。久しぶりにやってみたら面白いと思うぞ」


 初期の頃と比べてできることも多くなっているし、復帰するなら今だし、少し強め勧めておく。


「そうよね。ありがとう! 参考になったわ」

「それは、よかったよ。もし再開したら一緒にやろうな」

「そうね。足引っ張らないでよ」

「沙織こそ」


 ふふっと、少し笑みを見せると沙織は嬉しそうな表情を見せながら去っていった。

 これでFTOの売り上げに少しは貢献できたか。


 そんなことを考えていると


「何やら仲良さげでしたね」

「うわ!? って鏡花さん何してるの。って言うからいつからそこに」

「鏡花……さんですか……」


 鏡花は少し淋しそうな顔を見せて何かを考えていた。

 

「取り敢えず、話は昼休みです」

「ちょ、質問には!」

「もうすぐ授業が始まります」


 鏡花にそう言われて、ようやく時間が迫っていることを知り、俺もそそくさとし教室へと戻っていった。

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