第34話 休憩の日
週末となり、休憩の日に入った。ルーナとマールから口酸っぱくゲームをするのを止められたため、今日はログインしないことにした。
「欲しいラノベや漫画溜まってるし、買いに行こうかな」
そんなことを不意に思い立った。最近はゲームのしすぎで、他の作品が疎かになっていた。新しく発売しているものもあるだろう。
それに、学校以外で外に出ないのも、体壊しそうだしな。
思い立ったが吉日。俺は早速最低限の荷物を持って部屋から出た。
すると廊下に外に行く気満々のおしゃれをしていた桜が立っていた。
「あれ? お兄ちゃん出かけるの?」
「ああ、ちょっとな」
「珍しいね。お兄ちゃんが休みの日に出かけるなんて」
「まぁ、出かけるって言っても、本屋に行くだけだからな」
オタクの欲しいものを手に入れる時の行動力の凄さを舐めてはいけない。
いつも動かないナマケモノのような人でも、木登りする猿のように機敏に動くものだ。
「桜こそお出かけか?」
「うん! 友達と遊んでくるよ!」
「もしかして、彼氏か?」
少し鎌をかけてみる。実際、思春期真っ只中の女子中学生に彼氏がいても何らおかしくない。それにこんな美少女なら特に。
しかし、俺の質問に明らかに訝しそうな反応を示してきた。
「そんなわけないよ。同級生なんていい人全くいないし」
「そうなのか? かっこいいやつくらいいるだろ?」
「周りで騒がれてる人はいるけど、私にはうーんって感じかな」
「それじゃあ、桜が付き合いたいって思う人はどんな人なんだ?」
周りからモテモテのイケメンがタイプじゃないと言うのなら、どんな人がタイプなのだろうか。少し気になってきた。
「それはもちろん、年上で、いつも甘やかしてくれて、一緒に遊んでくれて、一緒にアイスを食べてくれる人かな」
「おいおい、それって桜がいつも家でやってることじゃ……」
「もう、鈍感だな」
そう少し呆れたように呟くと、俺の腕に抱きついてきた。
「お兄ちゃんが彼氏だったらいいのになってことだよ」
「……そんなお世辞を言ってくれるなんて、桜は優しいな」
俺は照れているのを隠すかのように、妹の頭を撫でた。
「もう、お世辞じゃなくて本心なのに!」
「それならもっと嬉しいよ」
桜はぷんぷんと怒っているような、仕草を見せてくる。
俺はそんな桜の頭を撫で続けて、桜を宥める。
幸い俺が照れていることには気づいてなかったみたいだった。それに安心した。
それにしても俺、妹にガチ照れしてどうすんだよ。確かに可愛いのは可愛いけど、それはダメだよな。
「お兄ちゃんこそどんな人がいいの?」
「そんなこと聞くか?」
「だって気になるもん!」
少し落ち着いた桜に問い詰められて、少し考えてみる。
俺ってどんな人がタイプなんだろう。すぐさま浮かんだのは鏡花と彩花だろう。
しかし、あの二人は絶対にありえないしなぁ。どっちかっていったら、親友の方がしっくりくるし、恋しているのかと言われたらわからなくなる。
こう考えてみると、異性を好きになるっていうものがわからなくなってくる。
二人のことはもちろん好きだけど……
そんなことを考えていると桜に現実に戻される。
「お兄ちゃん!」
「あ、ああ。どうした?」
「で、どうなの? 好きなタイプとか」
「そうだな……、一緒にいて楽しい人とかじゃないか」
何にも思いつかず、めちゃくちゃありきたりなことを言ってしまった。
「私と一緒にいて楽しい?」
「それはもちろん楽しいぞ」
「それならいいや!」
桜はニコニコとした笑顔でそう頷いていた。
「それじゃあ私そろそろ行ってくるね」
俺のタイプが聞けて満足できたのか、時間が迫っていたのもあるだろう。
桜はいく準備を整えていた。
「ああ、いってらっしゃい! 気をつけてな」
「うん! お兄ちゃんも気をつけてね」
その言葉を最後に、タッタッタッと階段を軽やかに降りていった。
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