第33話 ゲーム休憩

マール:今週末ゲームを禁止にしましょう

 カプリス:はぁ? どういうことだよ


 メサイアを待っている途中、マールがそんなことを言ってくる。


 ルーナ:今日の学校での会話で、ちょっとは休憩が必要だと思いませんでしたか?

 カプリス:それは……


 確かに、今回は誤魔化せたけど、今日みたいなことが何度も起きたらいつかはバレてしまう。


 マール:はっきり言って私たちは疲れてるわ。隠してるけどカプリスもそうでしょ?

 カプリス:この生活に慣れては来ているんだけど

 ルーナ:慣れてたら今日みたいなミスは起こしません


 ルーナの指摘にぐうの音も出ない。全くもってその通りだ。

 慣れているなんて、自信満々に言っていたのに情けない限りだ。


 カプリス:確かに休憩するべきなのかもな。今なら多少余裕も出てきたし

 マール:でしょ? 一日、二日休んだところで今のペースなら余裕よ

 ルーナ:体を壊したら折角欲しい家具を手に入れても、ログインできなくなりますよ

 カプリス:それはそうだな


 テスト中に体を壊したばかりの、ルーナは余計に敏感になっているのだろう。

 二人に無理させるわけにはいかないし、俺も休むべきだよなぁ。

 うーんと頭を悩ませて、決断する。


 カプリス:そうだな。休憩を取ろう

 マール:そうこなくっちゃ

 ルーナ:ありがとうございます!

 

 少し重めの雰囲気から一転、少し明るくなったように感じられた。

 元々、俺のモットーはゲームを楽しむことだ。手に入れれると分かったならわざわざ無理をする必要もないからな。


 カプリス:その日、何かしようとかの予定はあるのか?

 マール:何にもないわよ。久しぶりに、家で漫画でも読みながらゴロゴロしようかしら

 ルーナ:私もそんな感じですね

 カプリス:まぁそうだな。


 出かける元気もないよな。休憩の日なんだし。


 マール:どうしたのよ。いきなりそんなこと

 カプリス:いや、ちょっと気になっただけだって

 マール:本当? 私たちと会えなくて寂しくないの?

 カプリス:あー確かに、ここ最近毎日一緒だったもんな


 テスト期間も一緒に勉強していたし、終わってからもずっとゲームをしている。


 ルーナ:寂しくないんですか?

 カプリス:いうて、数日だし大丈夫だろう

 マール:そうなんだ


 何だその意味深な返事は。気になるじゃないか。


 マール:私は寂しいけどね

 ルーナ:私も、ここ最近しんどいことも多かったけど、楽しいこともいっぱいでしたから

 カプリス:そうか……

 マール:カプリスのこと大好きだから

 ルーナ:私も愛していますよ


 うっ、ゲーム内だけだと分かっているつもりなのに、二人の顔が脳裏にこびりついて離れない。

 リアルではただの友達、それ以下の知り合い程度だな。勘違いはしてはいけない。

 

 自分を戒めるように頬を叩いた。


 カプリス:ありがとうな。そんなに言ってくれて嬉しいよ

 ルーナ:カプリスさんも一言くらい言ってくれでもいいんですよ

 マール:本当よね

 カプリス:そう言われても


 何だか鏡花と彩花の顔がどうしてもよぎってしまう。

 たまにそう言うことは言ったし、言わない方が逆に不自然かもな。


 カプリス:俺もマールとルーナのことは好きだぞ

 マール:本当!?

 マール:本当ですか!

 カプリス:ああ、本当だよ


 二人はエモートを使い嬉しそうに飛び跳ねていた。

 異常に恥ずかしかったものの、こんな姿を見れたなら言って正解だったのかもな。


 メサイア:俺、邪魔だったかな?


 いい感じで終わりそうだったのに、最後を厄介オタクが入ってきた。タイミング悪すぎだろ。


 カプリス:お前はいつから!?

 メサイア:カプリスが週末の予定を訊いたくらいから?

 カプリス:めっちゃ前じゃねえかよ。なら話しかけてくれよ

 メサイア:いやー、ちょっと見てよって思ってただけなんだけど


 二人に言ったことよりも、メサイアに聞かれていたことが一番恥ずいんだが。


 マール:メーサーイーア!

 ルーナ:デリカシーなさすぎですよ!

 メサイア:ちょっと落ち着こうぜ

 マール:無理!

 ルーナ:無理です!


 よくやった、などと思いながらポカポカと殴られるメサイアを見ていた。

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