第32話 学校での失態
それからも俺たちは学校と狩りというもはや習慣となるかのように、こなしていった。
今まで以上にゲームが生活の一部になったためだろうか。
それとも寝不足で頭が働いていなかったのかもしれない。
もしくはその両方だ。ボロが出てしまったのだ。
「おはようカプリス」
「おはようございます。カプリスさん」
「ああ、おはようマール、ルーナ」
もうクラスメイトも見慣れた俺と清水姉妹の挨拶。何もおかしいことはないはずだった。
しかし、いつもとクラスの雰囲気が大きく変わっていた。
「何か変なこと言ってなかった?」
「カプリスって何のこと?」
「葉山の方もマールとルーナって」
そんな話し声が少しずつ大きくなって聞こえてくる。
もしかしてゲームのやりすぎで無意識に、ゲーム内の名前で呼んでしまったのか。
二人の顔を見ていると、あからさまに動揺しており顔が青くなっている。
「あの二人がそんなオタクっぽいあだ名なんてつけないだろうし」
「じゃあ何のこと?」
どんどん話が大きくなっている。取り敢えず、どうにかして誤魔化さないと。
「これは何でもないんだ! ただ言い間違えただけだよ」
あくまで焦っていることを悟られないように、冷静な口調でそう話す。
「でも、そんな言い間違いあり得る?」
「結構特徴的な言葉だもんね」
やはり俺の言葉だけでは弱いか。
二人にも言ってもらうしかないと目配せをすると、その雰囲気を察知したのか、二人が続け様に話す。
「当たり前じゃない。葉山相手にあだ名なんてつけるわけないじゃない」
「そうです。おそらく聞き間違いですよ」
俺の言葉だけでは説得力が足りなかったものの、二人が言った途端、みんなが納得したように頷いていた。
「そっか。二人が言うならそうなのかな」
「まぁこんなことで嘘つく必要もないしね」
この俺と二人での信用の差は何なのだろうか。
「まぁ、あの三人で何かしてるなんて考えにくいよね」
「そうそう。タイプが全然違うって感じでするし」
「葉山じゃ不釣り合いよね」
その通りなのだが、そこまではっきりと言われたらやはり少し悲しくなるな。
まぁ、リアルだけ見たら誰でもそう思うだろうし仕方がないよな。
「…………そ、そうね!」
「…………は、はい! そのとおりです」
二人は少し遅れたものの、流れでその会話に入っていった。
向かって行く途中で少し怒っているような表情が見えたものの、気のせいだろう。
今更こんなことで気にする二人じゃないだろうし。
ともかく話題から話を逸らせたのだから良しとしよう。
何とか、各々自分たちの会話へと戻っていき、落ち着ける空間となった。
そんな中、一人疑問を持っていたらしく委員長がこちらへと歩いてくる。
「さっきの話なんだけど」
「えっ? 言っただろ? 言い間違いだって」
「カプリスとか、マールとかルーナとか全部?」
「そうそう、寝不足でおかしいこと言ってしまっただけだよ」
こんなところでボロを出したら元も子もない。委員長にはお世話にはなっているが、この事だけはバレたらダメだ。
「そう?」
「ああ、そうだ」
「まあ、正直に言うわけもないか」
「どう言うことだ?」
「気にしないでちょうだい」
少し意味深なセリフを吐き、ぶつぶつと何かを呟きながらその場を立ち去る委員長。
何だか少し怖いもののそこまで考える頭も働かず、HRが始まるまで少し睡眠を取るように目を瞑った。
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