第29話 双子に叱られる

 カプリス:いやーメサイアのおかげでだいぶ効率が上がったよ

 メサイア:それならいいんだがな!

 

 久しぶりのマールとルーナ以外との狩りは、新鮮で思いの外楽しくできた。

 

 メサイア:でもカプリスは時間大丈夫なのか?

 カプリス:えっ!? もう十一時か!

 メサイア:何か予定でもあるのか?

 カプリス:あー……大丈夫だ


 メサイアに時間のことを訊かれ、ふと時計を見てみるともう十一時になろうとしていた。ルーナとマールがもう直ぐログインしてくる時間じゃないか!


 ちょっとは休んどかないと二人に文句言われるんだよな……。

 まぁ言わなきゃバレないだろう。


 カプリス:メサイアこそこんなにもやって大丈夫なのか?

 メサイア:ああ、今日は家に誰もいないし、テストも終わったからな。自由だよ

 カプリス:メサイアもテストだったのか。やっぱりほぼ同じくらいの時期にするんだな

 メサイア:まぁ、そうだよな。県が違っても一週間も変わらんだろうし


 そんな学生トークに花を咲かせていると、二人がログインしてきた。


 マール:あれ? カプリスもういたの?

 ルーナ:一時間くらい遅れてくると思ってました

 カプリス:失礼な


 まぁ実際一度寝てたら絶対遅れてただろうから、的を得ているんだけど。


 ルーナ:そちらの方は、メサイアさんでしたよね

 マール:久しぶりね

 メサイア:ああ、そうだな。二人とは会って無かったよな

 

 ギルドを作る前に、四人で狩りをしたこともあったためある程度の接点はあったのだ。

 それでも一年位前なので二人が忘れていなかったことに、安心した。


 マール:メサイアと狩りしてたの?

 カプリス:ああ、たまたま見つけて手伝ってくれるみたいで

 ルーナ:本当ですか! それはありがたいですけど、大丈夫なんですか?

 メサイア:ああ、カプリスに貸しってことでもう、五時間くらいは狩りしてるもんな?

 マール:五時間……?

 ルーナ:カプリスさん?


 おい、メサイア。なんでそれを言っちまうんだ。口止めしてなかった俺も悪いけど。

 メサイアの言葉を聞いた二人は、ギリっとカプリスを見つめてきた。


 カプリス:ちょっと話を……

 マール:聞くわけないでしょ!

 ルーナ:寝てくださいって言いましたよね!

 メサイア:あれ? もしかして言ったらダメだった?

 マール:いや、助かったわ

 ルーナ:助かりました


 俺とは百八十度違った考えでメサイアにお礼を言っていた。


 マール:今からでも寝なさい。また後からしましょう

 カプリス:大丈夫だって。今日は翼が生える飲み物も飲んでるから

 ルーナ:そんな物はただの誤魔化しですよ

 カプリス:本当に大丈夫だって。ゲームでオールなんてよくあることだろ? それに素材が集まらなくて二人に悲しい思いさせる方が俺はしんどいよ


 あと、俺の欲しい物も手に入らなかったら普通に落ち込む。


 マール:ふぅん 

 ルーナ:そうですか

 カプリス:わかってくれたか?

 マール:でも、今日だけだからね

 ルーナ:私たちもカプリスさんのために、色々したいんですから、頼ってくださいね

 カプリス:ありがとうな


 なんだかんだで理解が良くてとても助かる。でも、二人が心配してくれてるのは良く伝わるので、体を壊さないようには気をつけないといけないな。


 メサイア:なるほど、こうやってして二人を落としたのか

 カプリス:どう言うことだよ!

 メサイア:いやー求婚される理由がなんとなくわかった気がしてな

 ルーナ:メサイアさんには渡しませんよ

 メサイア:それは残念だ

 マール:私のだからね

 ルーナ:私のだよ!


 いじられているのに、この二人はよくメサイアについていけるな。俺なんか、素材集めを手伝ってくれているという恩がなかったら、間違いなく殴ってたぞ。


 カプリス:はぁ、取り敢えず狩りに行くぞ

 

 俺は呆れつつ、三人の会話を中断させる。


 マール:そうね。時間がなくなっちゃうし

 ルーナ:今日も頑張りましょう

 カプリス:メサイアもこれからよろしくな

 メサイア:できる範囲だけだが、任せとけ

 

 そして俺たちは何度目かもわからない、エルフの森へと向かった。

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