第27話 学校での葉山

はぁ……やっと授業が終わった……」


 机に突っ伏してそう小さく呟く。ほとんどの授業で寝ていたため、時間が経つのは早かったものの異常に疲れた気がする。


「補習行くか……」


 異常に重い体を起こして、カバンを持って立ち上がる。もう鏡花はおらず、先に補習に行っているみたいだ。


「葉山くん」


 背伸びをしながら歩いていると、急に呼び止められた。


「委員長。どうしたんだ?」

「今日ずっと眠そうだけど何かあったの?」

「あー……」


 ただ単に心配してくれているのだろうけど、ただゲームで眠くなっているだけなので、なんで返すか困ってしまった。


「何かあるなら助けるわよ」

「いや、大丈夫……だと思う」


 委員長の言葉はありがたいものの、委員長に助けれることじゃないしなぁ。


「そう? それならいいんだけど」

「ああ、心配してくれてありがとう」

「まぁ、ただ寝てる生徒を叱りにきたって節もあるけどね」

「ご、ごめんなさい!」


 少し睨むように言ってくる委員長に思わず反射的に謝ってしまう。こんな雰囲気も出せるのか。


「でも何もないならよかったわ」


 怖い表情からいつも通りの真面目な笑顔に戻り少し安心した。


「ああ、大丈夫だよ」

「それじゃあ来週からはもう寝ないわね」

「それはちょっと約束できませんね……」


 元気と言った途端鬼になるな。授業中に寝ないとか無理だろ。あんな欲望には抗えないって。


「ふふっ、冗談よ」

「えっ? 冗談」


 急に笑ってくる委員長を見て思わず腑抜けた声が出てしまう。


「そりゃあ授業中に寝るのは良くないけど、仕方がない時もあるからね」

「委員長でもあるのか?」

「そりゃあね。寝るのが遅くなる時もあるし」


 へー意外だな。委員長なんて、九時に寝て六時に起きる小学生みたいな生活してると思ってた。


「何か失礼なこと思ってない?」

「そ、そんなことないぞ」


 いや褒めてたんだ。嘘は言っていない。


「そう? それならいいんだけど」


 少しむすっとした表情をしていたものの、自分を納得させるように頷いていた。


「それじゃあ、来週はもう少し気をつけてね」

「ああ、わかった」

「じゃあまた月曜日」

「また!」


 そろそろ委員長も用事があるのだろう。委員長は話を切り上げると、荷物を持って教室を出て行った





「それじゃあまた後からね」

「体気をつけてくださいよ」

「ああ、わかってるよ」


 補習が終わり、鏡花と彩花と別れる。いくら暗いとはいえ、一緒に帰っていたらなんで噂をされるかわからないしな。


 これから二、三週間はこの生活が続くんだよな。ゲームで夜更かしするのは慣れてるが、こんなにも長い間続けることは無かったので少し心配になる。

 

 でも全部終わって欲しいものが手に入った時の感動は味わいたい。それに、二人の悲しむ顔も見たくない。


「よし、頑張るか」


 頬を数回叩いて、気合いを入れると急いで家へと向かった。



「ただいまー」

「おかえり! お兄ちゃん!」


 もう恒例行事となっている桜が抱きついてくるのをみて、家に帰ってきたのだと感じる。


「お兄ちゃん補習大丈夫なの?」


 桜は俺が補習を出ていることは知っているため、心配なのだろう。帰ってくるのもだいぶ遅いからな。


「ああ、大丈夫だよ」

「本当に? しんどそうなんだけど」

「気のせい気のせい」

「本当に?」

「うん、心配かけて悪かったな」


 過剰に心配してくる桜の頭を撫でて、落ち着かせる。


「ならよかった!」

 

 パァーッと顔が明るくなった桜を元気が出てくる。やっぱり妹は笑顔が一番可愛い。


「大丈夫なら、一緒にご飯食べよ!」

「ああ、そうだな」


 俺は元気になった桜に手を引っ張られ、リビングへと連れて行かれた。

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