第19話 妹登場
「それじゃあ今日はありがとうな」
清水家の玄関前で二人にお礼を言う。
ご飯を食べ終わった後、桜との約束もあったため帰ることにした。
「また明日から頑張りましょうね」
「家でもちゃんと勉強しなさいよ!」
「わかってるよ。ここまでやってもらって補習なんて事になったら二人に合わせる顔がないよ」
鏡花に勉強を教わって、彩花(一応鏡花もだが)に料理を振る舞ってもらった。
俺だけ何にもしてないのだからせめて、テストを早く終わらせて誰よりもお金を集めないといけない。
「二人も頑張ってな」
「はい!」
「当たり前よ」
「じゃあまた明日」
「また明日」
「お疲れ様でした」
二人に手を振りながら別れの挨拶を述べると、それに合わせるように返してくれる。
なんだか、前よりもだいぶ態度も良くなったなと思いながら、家を後にした。
「ただいまー」
アイスなど桜が喜びそうなものを買ってから、帰ってきたため少し遅くなってしまった。
「お兄ちゃんおかえりー!」
「おおっ! 危ないだろ桜」
俺を見つけるや否や、玄関まで走ってきて飛びついてくる。この美少女が妹の桜だ。
学校では優等生らしいが、家ではこんなダラダラで甘えてくる妹だ。でも、良い年齢だし、こう抱きつかれるのはちょっと困る。
「えへへ、お兄ちゃん」
「すりすりするなって」
ちょうど良い力強さでとてもむず痒いじゃ無いか。
「すんすん……」
「嗅ぐなって」
今帰ってきたばかりだから絶対汗臭いのでやめて欲しい。
「お兄ちゃん……」
「どうした?」
「さっきまで何してた?」
今までの笑顔とは打って変わって、一度離れてから真剣な表情になっていた。
「友達と勉強するって言っただろ?」
「どんな人?」
「詳しい説明は後だ、早く食べないとアイスが溶けるぞ」
なんだかいつもよりずっと真剣な眼差しで訊いてくる桜に、少し落ち着かせるためにアイスを見せてみる。
「うん、そうだね! 一旦私の部屋で一緒に食べよ!」
「ああ、そうだな!」
アイスを見ると少し考えてからいつも通りの笑顔に戻った。そして俺は手を引っ張られ、桜の部屋へと連れていかれた。
「アイス美味しいか?」
「うん美味しい!」
アイスを渡すと美味しそうに頬張る姿に癒される。
「それでお兄ちゃんどんな人と勉強してたの?」
玄関よりかは柔らかくなった口調で同じことを訊いてくる。
「ほら、前に桜に服装チェックしてもらって出かけた時あっただろ?」
「ああ、あのゲームの友達とオフ会するって時だよね?」
「そうそう。その人たちが同じ学校で同じ学年だったから、一緒に勉強することになったんだ」
「その人たちって女の人だったの!」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「言ってないよ!!」
酷く焦ったようで俺のこと責めてくる。
「どうしたんだそんな大声出して!」
「お兄ちゃんが取られちゃうじゃん!」
「取るってなんだ?」
「私といる時間が減っちゃうってこと!」
そんなに俺と一緒にいたいってことか? めちゃくちゃ嬉しいけど、別にずっと一緒にいなくても良いと思うんだけどな
それに
「あいつらは絶対そんなこと思ってないって。取るとか微塵も」
「そんなわけ無いよ! 好きでも無い異性を家に呼んで一緒に勉強するわけ無いって、その二人組、お兄ちゃんのこと好きだって!」
そう熱弁してくる桜。
まぁある意味好かれているっちゃ好かれてるけど。
「本当にそんなんじゃ無いって。テストで欠点取ったら一緒にゲームができなくなるから勉強しようってなっただけだよ」
「まぁお兄ちゃん成績悪いしね」
「だろ?」
「でも家にまで呼ぶって異常だよ?」
「確かにそうかもしれんが……」
家以外だとバレる可能性があるもんな。図書館もテスト期間だから知っている人いてもおかしく無いし。
でもこんな理由桜に説明するわけにもいかない。
「とにかく大丈夫だよ。俺が桜のことを好きなことは変わらないから」
「本当?」
「ああ当たり前じゃ無いか」
こんなに非の打ちどころのない妹を嫌いになるわけがない。
それにあの二人とは現実では何にも起きなさそうだし、桜の心配もすぐなくなるだろう。
「それじゃあお兄ちゃんのこと信用するね」
「ああ、信用してくれて大丈夫だ。ほらほら、アイス以外にもお菓子買ってきたから食べよう」
「うん! 私の好きなのばっかりだ!」
これで桜の疑惑も晴れただろう。
そう思い二人仲良くお菓子を食べた。
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