第17話 勉強終了
「取り敢えず今日はこれで終わりですかね」
「ふうー……やっと終わった」
「疲れたわ……」
家に来てから数時間が経過し、鏡花の一声で勉強が終わった。
珍しく彩花も弱音を上げていた。
「それにしても鏡花さん本当に教えるのが上手いな」
一人でやるよりも格段に速いスピードで数学のワークが進んでいったため、鏡花はすごいなと改めて思った。
誇張抜きに先生より教えるのが上手い。
「そんなことないですよ!」
「いやいや、あるわよ。私だっていつも助けられてるし。鏡花が居なかったらとっくに欠点取ってるわよ」
「彩花さんが居たおかげで教えるのが上手くなったのかもな」
「それは確かにあるかもです」
「……否定できないのが悔しい」
彩花はそう悔しそうにギリギリと歯軋りを鳴らしていた。
「葉山さんもう帰りますよね?」
「ああ、そうだなー。お腹も減ったし」
「迷惑じゃなかったら夜ご飯ここで食べていく?」
「いいのか!?」
あの彩花の料理を出来立てで食べられるかもしれない。そう思うと胸が躍り食い気味で返事をしてしまった。
「でもそっちの家の用事とか大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だと思うけど一応確認してくる」
そう言い残して一旦廊下に出ると妹に電話をかける。一コールもなり終わらないうちに繋がった。
「もしもし桜?」
「どうしたのお兄ちゃん!」
この元気そうな声なのが、妹の桜だ。二つ下の中学3年生だ。こんな思春期の時期にも関わらず、いつも甘えてくれるため、とても仲がいい。
小さい頃親が家にいなく、よく面倒を見ていたおかげかもしれない。
「今日友達の家で夜ご飯食べることになったんだけど大丈夫か?」
「あー……ちょっと待っててね……お母さーん」
そう断末魔のように母を呼ぶ声が聞こえてから、数分経った。
「うん今から作るところだったから大丈夫だって」
「それはよかった」
「私はお兄ちゃんと食べたかったな」
本当に可愛いやつだ。ここまで好いてくれるのは現実では妹だけだから悪い気はしない。
「食べ終わったら直ぐ帰るからさ。帰りにアイスでも買ってやるから、それ一緒に食おうぜ」
「本当に!」
「ああ、お兄ちゃんは嘘をつかないぞ」
「やった! 楽しみにしてるね!」
「それじゃあな」
「うん! お兄ちゃん大好き!」
「俺も桜のこと好きだぞ」
最後にそう言って電話を切る。
やっぱり俺の妹は可愛いよな。シスコンと呼ばれるかもしれないが、仕方がない。俺とは全く似てなく美人だ。
桜が妹でとても誇らしいと思っている。
「葉山さん、それって彼女ですか……?」
「彼女いたんだ……」
ちょうどタイミングよく、最後の言葉だけを聞いていたらしい、二人が驚いた様子でそう訊いてくる。
「そんなわけないだろ、妹だよ妹」
「なーんだ妹か。でも妹にしては仲良すぎじゃない?」
「ちょっと仲良いだけだと思うけどな」
「電話を切るときに大好きって言う兄妹は中々居ないと思いますよ」
「そうなのか?」
少し珍しいとは思っていたけど、そこまで驚くほどじゃないと思うけど。
「そうよ。本当に彼女がいるかと思って焦っちゃたんだからね」
「びっくりしましたよ」
「逆に訊くがゲーム内ならともかく、現実でいると思うか?」
「いないわね」
「いないです」
「きっぱり言うな……」
くそっやっぱりこんなこと聞くんじゃなかった。こうも断言されたら少しは悲しくなるぞ。
「でも良いじゃない。ゲーム内にはこんな美人二人に好かれてるんだし」
「そうですよ。葉山さん相手にしかこんな姿見せてませんからね」
「確かにリアルよりゲームの方が充実してるな」
リアルでは女子に嫌われているものの、ゲーム内じゃ人気の二人組に求婚されてるんだもんなぁ。
ゲーム内の方がリア充ってなんだかすごい皮肉だな。
「それに今もリアルで学校でモテてる双子と勉強会よ。リア充じゃない」
「アニメならそういう展開もあるけど、お前ら葉山司のことは好きじゃないしな」
「カプリスさんのことは大好きですよ」
「そこ止まりだろ?」
「頑張って惚れさせてみなさい」
「別に好かれるつもりはないよ」
今まで通りゲームが一緒にできる関係なら、好かれていなくても構わない。それにこの関係も楽しいしな。
グゥー……
妹の話から右往曲折して盛り上がっていると、俺のお腹が飯をよこせと言わんばかりの鳴き声をあげる。
「お腹減りましたね」
苦笑いしながら鏡花がフォローしようとしてくるが、逆に恥ずかしい。
「ご飯だご飯! 本当にここで食べても良いんだよな」
「ええ、私たちから誘ったんだし」
「ぜひ食べていってください! 今日は私も作りますから」
「おっ! それは楽しみだな」
彩花の出来立てのご飯が食べられるだけでなく、鏡花の料理まで食べられるとは。
彩花であんだけ美味しいのだから、双子の鏡花にも期待ができる。
「…………」
うん? なんだか少し哀れんだような目でこっちを見てくる彩花。なぜか今から俺が最高難易度のクエストに挑むような応援する目線を送ってくる。
まあどうでもいいか。今から美味しいご飯が食べれるんだし。
「それじゃあ行きましょ!」
「ああ!」
ご飯はなんだろうと考えながら、二人の後についていった。
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