第14話 ゲーム禁止

「おはようございます」

「おはよう」

「ああ、おはよう!」


 翌日、もういつもの光景となった清水姉妹との朝の挨拶をそつなくこなす。

 みんなのいる前では本当に挨拶しかしてこない徹底ぶりだ。挨拶が終わるとすぐに二人は女子の集まりに混ざる。


「なんだかんだでこの光景も見慣れたな」

「そりゃあ一週間近くも続いてるからな」

「なんでこいつがまだ生きてるんだろうな」

「怖いこと言うなよ!」


 みんなの噂なども落ち着き、多少ネタにされる程度にまでなった。

 これがあの二人の狙いだったのだろうか、などと考えている間に朝のHRの時間となりみんなが席へと着いていった。


「HRはじめるぞー」

「起立!」


40代くらいの男の担任がハキハキと大きな声で教室へと入ってきた。それに合わせるように挨拶をした後、先生の長い話が淡々と続く。


 この十分が長く感じるんだよなぁ。


 そんなことを思いつつ、昨日のイベントについて考えていた。


 みんなで合計1Mいや、2Mは欲しいところだよな。何か欲しいものがあって買えなかったら絶対後悔するし。

 それを後このイベントが始まるまで、最悪終わるまでには集めないといけない。

 俺たちみたいな小規模ギルドじゃ限定品なんてものは買えないだろうし。


「うーん、でも2Mはマジで大変すぎるよなあ」


 そう小さい声で呟く。何かいい方法があればいいんだけど。

 そんなことを考えている俺を現実に引き戻すかのように、先生は黒板をドンと叩いてきた。


「来週からテストが始まる。2年生最初という大事なテストだ。そのため、学年の先生と話し合って、どの教科でも一個欠点を取ると毎日補習をすることにする」

「まじっ!」


 先生の発言により、クラス中が不満の声が出始め、どんどんと声量が増していく。

 いつもは静かな生徒でも近くの席の人たちと喋っている異常事態だ。


「静かにー! まぁそういうわけだ。欠点さえ取らなければいいから余裕だろ!」

「余裕じゃないっすよ!」

「勉強すれば余裕だ」


 そうやってガハハと豪快な笑い声をクラスに響かせる。


「おい司大丈夫か?」


 近くの席の男にそんな疑問を投げつけられる。


「何がだよ」

「お前成績悪いじゃん」

「まぁ悪いけど欠点はギリ取らんように頑張るわ」

「いけるか? 今回少し難しめに作るって言ってたんだぞ?」

「そうなのか? でも一週間あればいけるさ」

「それもそうか」

 

 面倒くさいけど勉強しなくちゃいけないのか。少しゲームやる時間が少なくなるな。

 ……待てよ、一週間後テストだと!?

 

 うちの学校はほぼ一週間かけてテストが行われる。テスト終わりとイベントがもろ被りじゃないか!

 もしかして、素材集めも何もする暇もない?

 俺詰んだ?


 そのタイミングでHRの終わりを告げるチャイムが鳴った。そのチャイムが俺には今回のイベントを諦めろという合図にしか聞こえなかった。




「なあ、二人ともどうする?」

「欠点取るのはまずいですよ」

「でもゲームも諦めたくないわよね」


 昼休み。あれからこの三人で部室等へと集まってご飯を食べている。。


 彩花のクラスでも同じような説明があったらしく、慌てた様子でここに来ていた。


「鏡花は安心できるんだけど……」

「問題は俺たち二人だよな」

「因みに二人ともの一年の時の平均点数は?」

「ギリ欠点ではない」

「ギリギリ40はいってた気がするわ」


 俺たちの絶望的な点数を聞いて頭を抱える鏡花。


「ま、なんとかなるよ。今までもなんだかんだ欠点は無いんだし」

「難しくなるんですんよ?」

「うっ……」

「どれだけ難しくなるかもわからないし、怖いわよね」


 鏡花に痛いところをつかれて言葉を返すことができなくなる。

 確かに難しくなったら余裕で欠点を取るような点数ではあるからなぁ。


「もう、こうなったら今から猛勉強するしか無いですね」

「そうだな」

「ええ」


 テスト後には待ちに待ったイベントがある。それができなくなるのはどうしても避けなければならない。

 ちょっと素材やお金の集めれる量は減るかもしれないが仕方がないだろう。


 俺は勉強の期間もゲームは多少なりともやるもんだと思っていた。しかし


「これからテストが終わるまでFTOは禁止にします!」

「はあっ!?」

「本当に言ってるの!?」


 鏡花はそんな人とは思えないような提案をしてきた。

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