第13話 イベント告知

 カプリス:みんな見たか! 今回の発表!

 

 オフ会からしばらく経った頃、ゲーム内でイベントの告知があった。


 ルーナ:はい! 見ましたよ!

 マール:あれはすごいわよね!

 カプリス:だよなぁ。二週間後が楽しみだ。


 俺たちが話しているイベントとはギルドハウス改良イベントだ。 

 雨が多い今の時期、部屋の中に篭ろうという理由でギルドハウスに大幅なアップデートが入るらしい。

 外装や内装、それだけでなく置ける家具なども相当な量が増えるらしい。


 カプリス:その中でもやっぱり能力向上の家具が増えるなんて神すぎだろ!

 マール:何言ってるのよ! 能力向上なんてほぼ変わらない程度しか増えないのよ。それよりも、可愛い家具が増えることの方が大事よ!

 カプリス:そのちょっとをこだわるべきだろ常考

 マール:それなら少し装備強くすれば解決するじゃない!

 カプリス:装備と違う良さがあるのになぁ。


 本当にマールはわかっていない。ギルドハウスにその家具を置くだけで、微妙にステータスが上がるんだぞ。

 しかもギルドメンバー全員に効果があるのだから、三人がパワーアップしたらもっと狩りも効率が良くなるというのに。


 ルーナ:私も可愛い方がいいですね。今のステータスに不満はありませんし


 予想外のところから俺とは反対の意見が出てきた。ルーナでも可愛い方を選ぶとは。

 やはり女子はみんな可愛い方が好きなのか。


 カプリス:ルーナまでそっち側に立つとは

 マール:これで二対一ね


 胸を張るエモートでドヤ顔を見せつけてくるマール。

 ぐぬぬ、どうにかして二人を説得しなければ。


 マール:それにカプリスだってこういうの好きなんじゃないの?

  

 そう言ってチャットにURLを貼ってきたのでそれを見てみる。


 そこにあったのは今回のアプデで追加される家具のほんの一部の画像だった。

 その中に一際目を引かれる聖剣が地面に突き刺さっているようなオブジェクトであった。


 カプリス:確かにかっこいいな……

 マール:欲しいと思うでしょ?


 思う。めちゃくちゃ思う。これカッコ良すぎんだろ。厨二心がくすぐられる剣だ。このゲームをしている男なら誰でも惹かれそう雰囲気がある。


 カプリス:ほ、欲しい……

 マール:ほらね。家具に関しては性能よりも見た目なのよ。


 俺が説得しようとしていたのに、説得されてどうすんだよ俺。


 カプリス:だ、だが

 マール:もう諦めた方がいいわよー?


 ニヤニヤと少し煽るように言ってくるマール。

 クソッ! あの聖剣は欲しいため言い返すことはできない。


 そんなことを考えていると、ルーナが助け船を出してくれた。


 ルーナ:でもまだ能力向上が可愛くないと決まったわけじゃありませんから

 カプリス:確かに! 聖剣以外にもかっこいいやつは出るはずだ。それに能力向上がついていれば、

 マール:確かに、可愛いものもあるかもしれないし


 今のところ出ている家具は五、六個程度だ。

 今回の大々的な発表からするに、これ以上にも何十個も出てくるはずだ。その中にいいやつが出てくるはずだ。


 カプリス:より一層やる気が出てきたぞ!

 マール:そうね! 色んな風に家をリメイクするのも楽しみだし

 ルーナ:そうと決まれば素材とお金集めに行かないとですね

 カプリス:そうだな。どんだけ必要かも未知数だし、あるに越したことはないな


 そろそろFTOも集金タイムに入ってもおかしくはない。ここでお金を使わせようと、高めの値段設定にしてくるかもしれないからな。

 備えあれば憂いなし。これはネトゲの基本だ。


 マール:私の魔法でモブ如きぶっ潰してあげるわ!

 カプリス:程々にしてくれよ。心臓に悪いんだから

 マール:無理って言いたいところだけど、少し抑えてあげてもいいわよ

 ルーナ:やっぱりマールって素直じゃないね

 マール:もう、うるさいわね!


 今後の方針が固まり、三人で狩りへと向かった。


 しかし、俺たちはこの直後にある大きな問題に直面することをまだ誰も知らなかった。

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