第12話 オフ会後(彩花視点)
オフ会が終わった後の夜。
私は鏡花は部屋で話していた。
「ねえどうする?」
「まさかカプリスさんが葉山さんだったとは」
オフ会中はヤケクソでアニソンなどを歌っていたものの、家に帰った今驚くほど落ち着いていた。
「もうカプリスを諦める?」
「それは絶対嫌だよ」
「それはそうよね。私も絶対嫌だし」
葉山のことは確かに嫌いだ。でもカプリスのことは本当に大好きなのだ。ゲーム内困っていた初心者だった私たちを救ってくれた王子様。
そんなことがずっと頭の中をぐるぐると回っている。
「……私は葉山さんのことは別に嫌いじゃないから、学校でも普通に話しかけてもいいよ?」
「私は……やっぱり無理よ」
鏡花はそんなことを言っているが、私はまだ納得できない。
嫌っている理由は完全なる逆恨みだ。それは分かっている。でも、今さら態度を変えることなんてできないし、友達を失うかもしれない。
それだけは避けなくちゃ、今まで頑張ってきた意味がなくなる。
「やっぱり他の人にバレるのが怖い?」
「やっぱり鏡花には隠し事はできないわよね」
「長年伊達に双子をやってきてないよ」
そうやって少しドヤ顔になる鏡花。やっぱり鏡花にはなんでも見透かされちゃう。
「どうかした?」
「いいや、なんでもないわ。でも、鏡花は怖くないの?」
「……そりゃあ怖いに決まってるよ」
当たり前のようにそう答えてくる。しかし、鏡花の顔は希望に満ち溢れていて本当にそう思っているように見えなかった。
その勘は当たっていたみたいで、「でも」と付け加えてくる。
「私たちにとって一番気が合うのはカプリスさんなんだよ。そのカプリスさんと同じ性格の人が今こんな近くにいるの。友達になれたら楽しいと思わない?」
「…………それは思うわ」
「でしょ!」
クラスの友達と話している時は確かに楽しい。
でも、カプリスと話している時はそれとは比べ物にならないくらい楽しいし、気兼ねなく話すことが出来る。
そう考えてみると今は嫌いな葉山でも、気兼ねなく話せる友人になるのではないかと少し思った。
「明日少し話してみる?」
「うん。それがいいよ」
「そうよね。せっかくオフ会までしたのにここでカプリスのことを諦めるなんて勿体無いし」
鏡花と話してみてようやく決心がついた。現実でいくら嫌いな葉山でもゲームの中では大好きなカプリス。それは変わらない。
ならゲームと同じ状況なら、二人きりや、鏡花を含めた三人ならゲームみたいに話せて気が合うかもしれない。
そう思うと何故か無性にやる気が出てきた。
「そう決まったら色々決めないとね」
取り敢えず少し仲良くしてみようということが決まったところで、鏡花がそう切り出してくる。
「そうよね。まずはどんな会話をする?」
「そうだなー……。休み時間に話しかけに行くとか?」
「いきなり私たちが?」
「やっぱり不自然?」
「不自然過ぎよ」
今まで悪口しか言ってこなかった相手に、いきなり普通に話しかけたらみんなびっくりするに決まってる。
「一応みんなにバレないようにしないと」
「なら朝の挨拶だけとか?」
「まぁそれくらいが無難かしら」
それならギリ大丈夫かな。と思い鏡花の提案を受け入れる。
「後、もう一押し欲しいよね」
「お昼誰も居ないとこなら一緒に食べても大丈夫かしら?」
「お姉ちゃんないすだよ! どっちか一人が残って弁明してたらなんとか行けるよ」
「じゃあ決定ね」
私の提案が気に入ったみたいで鏡花はニコニコの笑顔でメモしていた。
「それじゃあ明日はどっちが行く?」
「鏡花に任せてもいい?」
「いいけどお姉ちゃんはいいの?」
「ええ大丈夫よ」
鏡花にいなくなった説明をさせてたら、どこでボロを出すかわからないしね。私がやった方が絶対に確実だ。
それに一日違いなんてほとんど誤差のようなものだろうし。
取り敢えず明日、葉山相手にすることは決まった。でも一つ問題がある。
「鏡花、今日のゲームはどうする?」
今日ゲームをするのはなんとなく気まずい。カプリスは絶対にログインしているだろうし、ログインしたら会うことにはなるだろう。
「今日はやめとこ」
「やっぱり? 気まずい?」
「それもそうだけど、ちょっと驚かしたいでしょ? 明日いきなり挨拶するのとか」
「確かにちょっと面白そうね」
鏡花の小悪魔みたいな考えはたまに出るが、今回のは面白そうだったので許可を出す。これが私に向いたら全力で阻止するんだけどね。
「それじゃあ明日頑張ろうね」
「ええ。絶対成功させるわよ」
「うん」
明日の成功を祈りながら、鏡花と二人で明日の計画を立てていた。
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