第6話 オフ会翌日


 メサイアに言われた通りに二人に合わせるぞ!


 そう意気込みながら教室へと入る。


「まだ来てないか」


 二人は来ていないらしく教室にはいなかった。なんだか少し安心しつつ友達と何気ない続けた。

 それから数分、先に鏡花が教室に入ってきた。鏡花とは同じクラスだが、彩花はとはクラスが別のためいつも彩花は遅れて教室へと入ってくる。おそらく彩花ももうすぐ来るだろう。


「おはようございます。葉山さん」


 彩花が来る前に鏡花にそう挨拶をされた


「あ、ああ! おはよう、鏡花さん」


 まさか普通に話しかけられるとは思っていなかったので、驚きつつもできるだけ普通に返事をした。

 まあ、鏡花は俺のことを嫌っているわけではないと言っていたので、きっかけさえあれば話せたのかもしれないが。

 しかし、ほかの男どもはそう思っていなかったみたいで


「あの鏡花さんが……司に……話しかけただと……」

「ほかの男子でもまともに話したことすらほぼないのに……」

「やばいぞ……明日は大嵐だ……」

「おまえら失礼すぎだろ!」

「だって司だぞ!!」

「それが失礼だって言ってんだよ!」


 ひどすぎる。こいつらには人の心なんてものは無いのだろうか。

 この状況を引き起こした張本人は見てわかるようにあたふたしていた。こんな状況を彩花に見られたら何言われるかわからんよな。

 そう思いいったん周りを落ち着かせることにした。


「まあまあ、鏡花さんでもたまにはこういう気まぐれくらいあるだろ。たまたまだよね?」

「は、はい。そうです!」


 挨拶だけでここまでなると思っていなかったのだろう。とりあえず落ち着かせようという俺の動きに合わせてくれた。

 こういうことをわかってくれるところが、鏡花がルーナなんだと納得せざるを得ない。


「ちょ、ちょっと鏡花!」


 最悪のタイミングで来た……。ガラガラと扉が開いて甲高い声が響き渡る。

 彩花だ……。

 絶対に怒鳴られるんだろうな。そう覚悟しつつこちらに歩いてくる彩花を見ていた。


「鏡花! 何、抜け駆けしてんのよ!」

「抜け駆けなんてしてないよ」


 怒鳴りの方向が俺ではなく鏡花だったことに驚き思わず放心してしまった。その間に二人で何やらこしょこしょと話していたらしく、しばらくした後、彩花はこちらへ体を向けてきた。


「お、おはよう、葉山……」

「……うん?」

「だからおはようって言ってんのよ!」

「あ、ああ! おはよう」


 ど、どうなってるんだ? 鏡花だけならともかく彩花まで挨拶を……。これじゃあアニメのツンデレキャラじゃないか。


「鏡花さんだけでなく、彩花さんにまで……」

「こいつをどうするよ?」

「一旦十字架に吊し上げるか」

「そんなんじゃ、ぬるいな」

「おいおい! お前らどす黒いオーラが出てるぞ!」

「うん? 出てるんじゃなくてなぁ」

「出してるんだよ!」


 そう言いながら嫉妬をむき出しにした男どもは、こっちに向かって襲ってくる。


「ちょ、二人とも助けてくれよ」


 俺は近くを逃げ惑いながら、清水姉妹に助けを求める。


「ど、どうしよう、お姉ちゃん。私たちのせいだよ」

「ふん、放っておけばいいのよ」


 そう言ってここから去っていく彩花。それに、その後を駆け足で追っていく鏡花。


 あいつら爆弾だけ置いて放置かよ!


「つーかーさー? 覚悟はできてんだろうな?」

「ちょ、お前ら? 話せばわかる」

「もう話することなんてねえんだよー!」


 ああ、終わったな。こいつらも止まる気配はこれっぽっちもみせてねえ。男の嫉妬怖過ぎんだろ。


「あ、やべっ!」


 俺がつまずき転んだところをチャンスとばかりに襲ってくる。


「あなたたち! やめなさい」


 もう覚悟をして目を瞑った時そんな声が、俺の前から聞こえてきた。

 目を開けると、長い三つ編みがゆらゆらと揺れていた。


「委員長!」


 沙織が俺のことを助けにきてくれたみたいだ!


「どいて委員長! そいつ殺せない!」

 

 何だよそのヤンデレみたいなセリフは。


 そんな物騒なセリフに何も動揺せず、眼鏡をクイっとあげて少し語気を上げて話していく。


「どきません! 朝からこんなに騒いだらダメでしょ!」

「ちっ!」

「今回は許しておいてやるが、」

「覚えとけよ」

「お、おう……」


 委員長に言われたみんなはそれぞれバラバラに離れていく。


「助かったよ。委員長」

「私はクラスをまとめるのが仕事だからね」


 沙織の手を借りて立ち上がる。本当に面倒見のいい人だよなぁ。


「本当に救世主だよ。ありがとう」

「べつに、どうってことないわよ。委員長として仕事をしただけだから。それよりも、これから大丈夫なの?」

「ああ、あいつらもHRが終われば落ち着くだろ」

「そっちもそうだけど」


 そう沙織が目配せをした方向を見てみると清水姉妹の集団がいた。

 何やらこっちを見てヒソヒソと話している。嫌な予感しかしないんだが……。


「ま、まぁ、何とかなるよ、多分」

「本当? 何かあったら相談には乗るからね」

「本当にありがとう。委員長は面倒見がいいな」

「別に普通よ」


 その会話を最後にチャイムが鳴りHRが始まった。

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