第5話 ネトゲと現実

 カプリス:さすがに今日はいないか


 オフ会の後ログインしてギルドハウスの中をのぞいてみたものの、もぬけの殻だった。

 

「この時間にいないということは今日はログインしてこないだろうなぁ。一人で狩りに行くのもあれだし、今日は町中ぶらぶらしてみようかな」


 そんなことを思いつつ、ギルドハウスの外に出てみた。


 「これからどうしようか」


 俺は町の中を歩きながら、これからのことを考えていた。

 明日や明後日になったとしても、ルーナやマールとは元の関係になんて戻れないだろうし、学校でも、相当気まずいよなあ。


 そんなことで頭を悩ませていると見知った男が一人歩いていた。


 カプリス:メサイアじゃないか

 メサイア:カプリスか! 元気にしてたか?

 カプリス:まあ、なんとかな。おまえは?

 メサイア:俺はいつも通りだよ


 この厳つい顔つきで大きな盾を持っている男はメサイア。いつも初心者プレイヤーの手助けをしている面倒見のいいやつ。

 ルーナとマールのほかで仲いい人物の一人だ。なんなら二人よりも前から知り合っている。


 カプリス:最近ログインしていなかったみたいだけど何かあったのか?

 メサイア:まあ、リアルが忙しくてな。それより、あの美人エルフとはどうなったんだ?

 カプリス:そんなこと聞きたいのかよ

 メサイア:当たり前だろう。それを聞くためにログインしたと言っても過言ではない

 カプリス:それは過言だろww


 メサイアを含め俺の周りのほとんどは、求婚されていることは知っている。最初こそは嫉妬心むき出しのやつも多かったが、一年もたてば面白がるやつの方が多くなった。

 メサイアはその筆頭で、会うたび開口一番に聞いてくる。


 メサイア:で、実際どうなんだよ

 カプリス:どうって?

 メサイア:わかってるだろう? 進展だよ進展! どっちと結婚するとかの

 カプリス:そんなこと言われてもなあ


 前聞かれたときとほとんど変化なんてないしなあ。やったこといえばオフ会くらいだが……。

 誰かに相談したかったしメサイアにしてもいいかもしれないな。


 カプリス:誰にもいわないって約束できるならいってもいいけど?

 メサイア:ああ、絶対いわないから聞かせてくれ

 カプリス:ほんとに調子のいいやつだな


 メサイアのあからさまに調子に乗っている態度にあきれつつ、ことのいきさつを説明した。カプリス:――ということがあったんだがどうしたらいいと思う?

 メサイア:なるほどな


 二人とオフ会であい、それがクラスで俺のことを嫌っている二人だったことなどを話した。

 思いのほか真面目な相談になってしまったものの、メサイアは真面目に話しを聞いてくれた。


 メサイア:とりあえず明日学校に行ってみないとわからんよな

 カプリス:そうだよな

 メサイア:俺も高校生だからその気まずい気持ちもわかるしな

 カプリス:そんなこといってもいいのか? てか、高校生なのかよwwww

 メサイア:もうこれくらいはいいさww


 そうやって豪快に笑っていた。まさか同年代だったとは。勝手に三十代くらいかと思っていた。


 メサイア:ま、とりあえず、明日の二人の態度に合わせたらいいと思うぞ。ゲーム内もそうしてればなんとかなるだろう。

 カプリス:そうするしかないか。現実ではともかく、ゲーム内ではいつも通りでいたいんだけどな

 メサイア:絶対いけるとは限らん!

 カプリス:そうだよな……

 メサイア:でも、もし二人と別れたら俺が慰めてやるよ

 カプリス:それは助かる


 なんだかんだで面倒見のいいやつだなと再認識した。


 メサイア:その上であの二人はもらうけどな

 カプリス:おまえがちで最低過ぎるだろww


 少し腐った笑いを浮かべるメサイアを見て少し相談したことを後悔した。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る