♯14 永遠の存在者② 絶望の足音が近づいてたんだ(後編)
「あの双子に直接訊けばよろしいのでは?」
勇魚の問いに対し、マナは
何か話しにくい事情でもあるのだろうか。
それとも――自分は何か彼女の気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
「ここから見ていたんじゃないのか? 例の蝶の翅のスクリーンでさ。あれは
――『はて? なんのことですか?』
――『わたしたちはおにーちゃんにもう一度会いたくなったから起こしただけだヨ?』
そう、しらばっくれていた。
「散々チュッチュしたあとのトロ……ンとした状態でも口を割ろうとしませんでしたものね」
「やっぱ見てたんじゃねーか。てかやめてそーゆー生々しいこと言うの」
「まあ、あなた様にまた逢いたいという気持ちをいい加減抑えきれなくなっていたところに、今回の事態ですからね。あなた様を目覚めさせる大義名分が手に入って最初は無邪気に喜んだものの、いざあなた様とまた逢えたら、今度はあなた様を戦いに巻き込むことに抵抗を覚えてしまったのでしょう。……地球の分霊としては少々問題があるくらい優しい子たちですから」
「え?」
「この模造地球デイジーワールドの化身、分霊であるあの双子は――そしてわたくしたち他の眷属もですが――優しいだけはダメなのですよ。ときとして残酷になり、無慈悲な振る舞いをしなければならない場合もあるのです。ヒトという
「……それは、」
「それこそ、ヒトから恨まれるに値する真似をしなければならないときもあります。『これが自分の使命だ』『たとえ誰にも感謝されず、それどころか恨まれようとも、与えられた役割を全うするのみ』――そう割り切らないとやっていられません」
「………………」
マナの言葉を聞いて勇魚がふと思い出したのは、
「それ以前に、独断専行はどうかと思います。あなた様抜きで勝ち目があるとでも思っているのでしょうかね、あの双子は」
「? なんの話さ?」
「……すぐにわかります。それより、先程の『今この地球上で何が暗躍しているのか』という質問への答えですが、」
「――ぶっちゃけ、アタイらにも詳しいことはわかんねーんだよ」
「!」
突如割り込んできた声に振り向くと、
「抜け駆けは許さねーぞ」
クーはマナをジロリと睨み、意味不明なことを言ってからこちらへ向き直り、
「
「
すべては
「そ。
一言多い。
……と、言いたいのは山々だが、彼女たちのことを綺麗サッパリ忘れていた手前、文句は言えない。
「アタイらの中でもマナや
「連中? ……それが今この地球上で暗躍している『何か』なのか? 何者なのさ?」
「わかんねー」
「わかんねー⁉」
「仕方ねえだろ。さっきも言ったとおり、連中は数多の平行宇宙、
「む……」
「ハッキリしていることはふたつだけ。連中の目的が人間採集だということ。そしてガイアのチビどもやアタイらといったオーバーロードが〈
オーバーロード。それがあの双子や彼女たち――この宇宙の生みの親の眷属である者たちの正式な呼び名らしい。
「〈
「本当よ。もっとも、人間なら誰でもいいというワケではないみたいだし、人間を集めて何をしているのかもわかってないのだけれど」
勇魚の質問に答えたのは、いつの間にか氷山の前に立っていた純白のシャープカとファー付きコートを纏った少女――〈
「連中の
〈オロチ〉などという恐ろしい名前の天体があったことも驚きだが、それ以上に気になるのは、
「すぐ隣の宇宙にも現れたのか⁉」
「ええ。隣だけじゃない。クーが今言ったでしょう? これまで数多の平行宇宙、
「激戦を……」
「ええ。死闘、あるいは殲滅戦と言い換えてもいいわ。……でもね、悔しいけれど、その蛮行を阻止できたことはほとんど無いの。隣の宇宙も含めて、ね」
「それじゃあ、」
「そうよ」
ゴクリと唾を呑む勇魚に、リッカは小さく肯き、
「ほとんどが返り討ちに遭った。多くの人間を連れ去られた上で、もう用無しとばかりに地球もろとも滅ぼされてきたの」
「っ」
「そう……ただひとつの例外、第1平行宇宙の
「! あるのか、例外が」
「はい」
とマナは相槌を打ち、
「第1平行宇宙はとても幸運でした」
「幸運?」
「第1平行宇宙はその番号の示すとおり、あなた様が生まれ育ったオリジナルの地球が在る第0宇宙と隣り合う宇宙です。だからでしょうか。オリジナルの地球を出自とする
「他でもない、その
マナの言葉を引き継ぐように、クーはこう言った。
「のちに数多の宇宙で謳われることになる英霊――初代の〈ガイアセンチネル〉なのさ」
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