♯14 永遠の存在者② 絶望の足音が近づいてたんだ(前編)
瞼を持ち上げるとそこには、星々の代わりに0と1を模った緑の光が明滅する宇宙空間と、見慣れぬカタチの大地と大洋を
「……『もう一度ここに来たい』『キミたちと会って話がしたい』とダメ元で念じてみたものの、正直、素直に応じてもらえるとは思わなかったよ」
背後、巨大な氷山の前に佇んでいた
「
周囲を飛び交う
「……つれない? ボクが?」
「綺麗サッパリお忘れになっていたでしょう? わたくしどものことを」
「う。まあ、そうだケドさ……。仕方ないだろ。
「おや、言い訳ですか? 昨夜あの双子が文句を言ったときは素直に非を認め、お詫びの添い寝までしたくせに」
「うぐっ」
「その上、今朝もあの双子とチュッチュしていましたよね?」
……見られていたらしい。
「チュッチュ言うな。――仕方ないじゃん。海上での戦いのせいで、テルルとレアに分けてもらった『
「だとしても、よく平気でチュッチュ出来ますね。あんな幼い見た目の女の子たちと」
「……いや、見ていたのなら知っているだろ? 一応あのときだけはテルルとレアに大人の姿になってもらったゾ」
やむを得ない事情があったとはいえ小学校低学年くらいの見た目をした女の子たちと
……まあ、大人とは言っても、厳密にはこちらと同じ高校生くらいだが……。
「良かったですね。あの双子に大人の姿になってもらう大義名分が手に入って」
「やめろ。それだとボクに下心があるみたいじゃん」
「全く無いと言い切れますか?」
「当たり前だろ」
「じゃあ、大人の姿のあの双子と
「……そうは言ってない」
自分も男だ。美人と
……ただ、大人の姿になってもらってもなお、
「それで?
「まあ……うん」
久しぶりに見たが(当然だが『前回』も何度か目にする機会はあった)、相変わらず人間離れした美貌だった。
通常あれほどの美人は存在しえない。
ある意味、反則と言ってもいい存在だ。
おかげでギリギリだった。いろいろと。
「………………シスコン(ぼそっ)」
「今シスコンって言った⁉」
「幻聴です」
「嘘こけ! てか、確かにテルルとレアはボクのことを『おにーさん』や『おにーちゃん』って呼ぶけれど、彼女たちは別に妹分ってワケじゃないからね⁉」
「では、あなた様にとってあの双子は何ポジションなのです?」
「………………」
なんだろう。自分でもよくわからない。単純な妹ポジションでないことだけは確かだが……。
「相棒、かなぁ?」
「なるほど。人生のパートナーだと」
「拡大解釈!」
「そうですか? あながち間違ってはいないと思いますが。あの双子はあなた様があの氷山の中で
「その理屈で言うと、ずっとボクの
「………………」
急に黙り込まれてしまった。
狐の面をしているため表情は窺えないが、どうやら言い
しまった、どうフォローしよう……と勇魚が悩んでいる間に、マナのほうから口を開く。
「……なんにしても。あなた様的には大義名分がちゃんと用意されていて、見た目がチビッ子じゃなければ、あの双子と
「え? ……あー……。それは……まあ。ていうか、いつまで引っ張るのこの話」
「………………ロリコン(ぼそっ)」
「今の話の流れでロリコンはおかしくない⁉」
「間違えました。シスコンでしたね」
「だからシスコンでもないって話を今したばかりだろ!」
「――それで? 今回は何が目的でここに? わたくしどもに何か御用でしょうか?」
「話を逸らしたな」
「気のせいですお兄様」
「誰がお兄様だ⁉」
「間違えました」
「どんな間違い⁉ キミ間違い多いな!」
「あなた様はあの双子に対して間違いを犯さないよう、くれぐれもお気を付けくださいね」
「やかましいわ! いい感じに話のオチをつけようとするな! ――ハア……いいや、もう。さっさと本題に入ろう」
「はい」
「ボクが今ここにいる理由だケド。昔、答えてもらえなかった質問に、今日こそ答えてもらおうと思ってね」
「と、申しますと?」
「〈ガイアセンチネル〉ってのは結局なんなんだ?」
勇魚に質問にマナは少しだけ考えるような素振りをしてから、
「その名のとおり、この模造された地球の
「……質問の仕方を変える。〈ガイアセンチネル〉はこの地球を何から護る存在なんだ?」
「………………」
「二十五年前、
主や、
あえて、赦されざる罪を犯し。
たった独り、最後まで憎まれ役を演じ切ったのだ。
――『だから……イサナ。私の口からこんな言葉を聞くのは、おまえからすれば業腹だろうが……敢えて頼みたい。どうか「その日」が来たら、この
すべては、この
……たぶん、それが、
「
言って、勇魚はマナの背後に聳える氷山をチラリと見遣る。
〈
その中には、二十四年前自分と死闘を演じた眷属が今も閉じ込められているはずで――
「逆にお訊ねしますが、何故そのようなことを知りたがるのです?」
「トボけるな。その『何か』は既にこの地球上で暗躍している。だからテルルとレアはボクを目覚めさせたんだろう?」
そう――二十四年前、自身がヒトの世に混乱を
「――答えてくれ。今、この地球で何が起こっている? 何が暗躍しているんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます