第2話

 思いがけず一つの答えに行き着いて気をよくした僕は、この街にある親戚の家を訪ねてみることにした。男やもめの叔父が一人で暮らしている。その家は、かつては宿場の離れだったらしく、結構でかい。今は期末試験を終えた親戚の中学生たちが遊びに来ているはずだった。合宿というか、お泊まり会、というか、まあそんな感じらしい。

 久しぶりにやって来た古い家に、僕が玄関から入ると、いきなり「たいくつ」の匂いがした。叔父と囲碁を打っている一人をのぞけば、若い来訪者たちは、みな居間で漫画を読んでいた。寝そべったり、柱に寄りかかったり。

 これも「生活」なのだろうか? と、僕は皮肉なことを思ってみた。他人の休日の過ごし方に、いちいち文句を言っても始まらないが、もう少し生産的な姿勢を持てよ、とは言いたくなる。少なくとも、僕は、ここには、長くいたい気分にならなかった。中学生が出してくれた茶を飲みながら、近くにあった漫画の最初の一話だけを読み終えると、軽く挨拶して、再び外に出た。

 海は、いつもどおりそこにあった。

 北の冷たい海だ。鉛色の沈黙の海を見ていると、ふとタバコが吸いたくなった。もうずいぶん前にやめたタバコだったが、海を見ながら吸った記憶がよみがえってきたからだろう。もっとよいことがよみがえってくればいいのに。口の中が苦く感じられてしまう。

 そういうものかもしれないけれど。

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