虚偽の証明

夜凪アリア

虚偽の証明

時の狭間のあわい

夕焼けが落ち

月が紅に黄昏る


真実の果実は悠久を統べり

凍り漬けの心は灰に焼かれる


長い渡河で思うのは亡き母の後


傀儡になりえ意味を失った私は

最期の周期に囚われる


終わりない紅蓮の讃美歌に

いばらの道は微笑み


落とした影に夜が映る


果ては宇宙に思え

今日は地獄に思えた


暗き深淵を旅し

流れる風に翼を落とし

地底に眠る


闇を前に線を引き

平和を唄って

罪に背いた


命はがらんどうにむせび泣き

魂は所在なく彷徨う


一心に掛けた誓いも

過去になっては廃れた


独房の冷たさが染み

心境は社会には向かない

ただ硬直した縦社会と

町を捨てた私が交錯し

沈んだ今日に火を灯す


誰もかもが道理を正義を道徳を

重んじる中

ただ私は空虚な虚空をなぞる


虚像にこそ痛みはないと

ただ自分勝手に抱き寄せ

孤独に寄り添った


明日は来るが

今日だけで十分で

思い石を引きずり

ただ涙と一緒に

重荷は増え

泥濘に囚われる


正しさだけが正しいなど

ありはしないと

先駆者は言うが


正しい罪を産んだ事に誰も気づかない


反転した理論と論争を繰り返し

ただ暇を待ち得ては

仕事だと身を肖る


もしも他に道楽を持ち得るなら

なぜ、それだけ奇麗なのか

教えてほしい


私は暗がりを行き

佇んだ終点で夢を見ては

ただうなされ

比重の狂った肉体を抱えて

朝を迎える


ただ率直に心通りに生きれれば

それに越したことはないと

思うがばかりで


口先だけで渡り歩く私がいた

それは防衛で

また殻でもあって

守るため嘘をつき

仲間になるため媚びている


だがそうでもしなければ

この世界に居場所を作りえないと

ただ涙を見ることになる


だから慣れない生き方を強いられ

息を止めて耐え忍ぶのが普通なのだ


心に明日の兆しはない

泥まみれの汚れた私が居て

張りぼての一味で

もう真実さえ醜く目を合わせる事ができない


それが世界なんだ

残酷なほど美しいのだ

この間違えを否定しても


誰も同情しない

乗っかっていくことが

飛び乗ることが

全てで

全ては円環の理


予定調和の世界で

夢見る事さえ

タブーになる

ただ神のまにまに成りえ


信じることから

疑いを学ぶ

二律背反とした

その終わりのテロップで

神は待ち受け


ただ私達は

もてあそばれる


それが私達の存在で

それ以上も以下もなく

ただ真実ほど目がくらみ


最期は消えるのみ


それでも生きねばならない

ただ一回の死があるだけ

だからなんだって超えていける

その一度まで

私達は自由だ


さぁ行こうか

人生を乗り越える旅を。

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虚偽の証明 夜凪アリア @YanagiAria

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