第22話 これは実質ダンジョン配信モノ
「殿。我らメタモルフ3姉妹。ただいまより復帰いたします」
シリウスとプロキオンとベテルギウスが俺のところにやってきてそう告げる。
「シリウス。怪我はもういいのか?」
高速の金属に何度もぶつかった割には怪我の回復が早いような気がするけれども。
「はい、我々は怪我の治りも早いのです」
「そうか。それは良かった。よし、それじゃあ、早速ダンジョン探索を再開だ。グレムリンが作ってくれた武器。人間形態になってそれを装備して戦う。それが戦闘の基本だ」
「はい、しかし。殿。探索時にはウルフ形態の者も配置した方が良いかと思われます。人間形態は嗅覚や聴覚が著しく落ちます。索敵能力が落ちれば不意打ちをくらいやすくなります」
「そうか。まあ、その辺の切り替えの判断はお前達に任せる」
強力な武器が使える人間形態と索敵ができるウルフ形態。その2つを駆使してダンジョン攻略か。なんかこっちまでワクワクしてきた。
「それから、俺もダンジョン内部を知りたい」
「殿が……? 非常に申し上げにくいのですが……ダンジョンの2層は強力なモンスターばかり。拙者たちの力では殿をお守りしきれるかどうかの保証は致しかねます」
「確かにな。でも、俺は直接出向かない。代わりにこいつが行ってくれる」
俺はタブレット端末を操作する。その操作を受けてグレムリンが修理してくれた撮影用のロボットが動き出す。
「お、おお! 殿! この奇怪な物体は一体……!」
「あのメタル化した配信者が置いていったロボット。それをグレムリンが修理してくれたんだ。まあ、食費はちょっとばかり高くついたけどな」
「さようですか。なるほど」
というわけで、今回の編成は、シリウスとプロキオンで留守番はベテルギウスだ。
シリウスが前衛、プロキオンが中衛。そして俺がそこそこの後衛で撮影することにした。
第2層に辿り着くや否や、いつものドラゴンが現れた。
「せいや!」
シリウスがジャマダハルでドラゴンの喉元を刺突した。あっと言う間にドラゴンは絶命してその場に倒れた。
「ふう。流石はグレムリンの武器。ドラゴンを一撃で倒すとは……」
攻撃したシリウス自身がグレムリンの武器の性能に驚いている。この攻撃を全く通さなかったメタル。あれはどれだけ強かったんだ。
「シリウス姉様も無駄のない動き。流石です」
ウルフモードのプロキオンも尻尾を振って喜んでいる。非常に愛らしい姿だが、急に鼻をピクっと動かして耳を立てて、警戒の表情をする。
「シリウス姉様。奥から奴が来ます」
「わかった」
シリウスが構える。ダンジョンの暗がりから現れたのは……ぬらりひょんのように頭が長くて、両手がカマキリのカマのようになっている奇怪な生物だった。
なんだあれは気持ち悪いな。
「殿。あれがドラゴンを捕食していたモンスターです」
『あれが? グロいだけのモンスターじゃないのか?』
「来ます……!」
奇怪なモンスターは、カマを振り下ろしてシリウスに攻撃をする。シリウスはそれを回避する。速い……! 後ろで高みの見物をしている俺だからこそ目で追えたけれど、実際にあの場にいたら俺は回避できなかったと思う。
「とう!」
シリウスはモンスターの懐に忍び込んで、ジャマダハルでカマの付け根を突き刺した。
「ギシャアアアア!」
モンスターが叫びをあげる。カマが付け根からぽろっと落ちて、それが地面へと落ちる。
「おお、ダメージが通りましたぞ!」
カマを失ったことでバランスを崩したモンスター。シリウスが追撃を行い、どんどん体にジャマダハルを突き刺していく。
めった刺し。それを続けることで、ついにシリウスはモンスターを倒した。
「ふう。やはり、この武器は強い。お陰で拙者の戦闘力も上がりましたぞ」
ドラゴンを倒した捕食者。それすらも強くなったメタモルフたち。うん、戦力も確実に上がってきている!
そんな調子でダンジョンを攻略していると分かれ道に差し掛かった。
「プロキオン。どちらに進んだ方が良い?」
「そうですね。我は左の道に進む方が良いかと思われます。左には生物のにおいはしません」
プロキオンの嗅覚で安全な道がわかった。まずは危険なモンスターがいない道を選ぶのが正解ということか。
プロキオンの言う通りに左の道に進んでいくと、ある小部屋についた。その小部屋の中央には……友好的なスポーンブロックがあった。
「殿、スポーンブロックがありました!」
『ああ。しかし、電池切れだ。光を当ててエネルギーを補充しないと』
俺はコメントで返した。どうせ、この場に俺はいないから、起動はできない。けれど、電池切れのスポーンブロックか。
『よし、俺がそっちに向かう。スポーンブロックの回収は人間じゃないとできないからな』
「はい。プロキオン。ダンジョンの入口まで行って殿のお出迎えと護衛を頼む」
「了解です」
◇
プロキオンに護衛されつつ俺は例の部屋に辿り着いた。道中の敵は既にシリウスに倒されているから特に厄介なモンスターに遭遇することもなかった。
「殿。お疲れ様です」
「おっす。シリウスお疲れ。プロキオンもここまで護衛ありがとな」
俺は部屋の中央のスポーンブロックに向かった。友好的なスポーンブロックではあるが、やはり光が点灯していない。電源が切れている証拠だ。
そのスポーンブロックを回収する。割と軽いな。
そのままスポーンブロックを抱えてダンジョンを脱出して拠点へと戻った。このスポーンブロックに光を当ててみよう。光源がある道具生産部屋に向かう。
「ご主人様。それはなんですか?」
「ああ、これか? マキ。これはスポーンブロックだ。電池切れみたいだから光源に直接当ててエネルギーを補充したいんだ」
「そうでしたか」
スポーンブロックに光を当てて、しばらく休む。拠点に戻ったシリウスとプロキオンがベテルギウスと合流して、3体でじゃれあっている。なんとも微笑ましい光景だ。無限に見ていられる。
「ご主人様ー。スポーンブロックのエネルギーの補充が完了しました」
「おお、そうか。それじゃあ、早速起動してみよう」
「ワクワクしますね」
マキと一緒にワクワクしながらスポーンブロックを起動した。しばらくするとスポーンブロックが光り輝き、中からモンスターが出てきた。
青白い光が宙を漂っている。その光には目と口がついていて表情が読み取れる。
「コンニチハ ワタシハ ウィル・オ・ウィスプ。ヨロシク」
「ああ。俺は伊藤 大地。よろしく」
なんかまた変わったモンスターが出てきたな。まだ、このモンスターの特性がわからない。俺はスポーンブロックを停止させた。
「ウィル・オ・ウィスプ 。お前はなにができる?」
「ワタシハ 戦闘ハ デキマセンガ 光ルコトガ デキマス オヤクニ タテマスカ?」
光ることができる……まあ、見たまんまの性能だな。
「えっと……一応聞いておくけど、お前が食うものはなんだ?」
「ワタシノ エサハ 覚醒者ガ 能力ヲ ツカウトキノ エネルギー」
「エ、エネルギー?」
「エエ 覚醒者ハ 能力ヲ無制限ニ 使用デキナイ 魔力ノ根源 魔源ヲ 消費スル必要ガ アリマス」
「その魔源ってやつさえあれば、お前は他に何もいらないのか?」
「エエ。水モ食料モ イリマセン 魔源ハ 覚醒者ガ 睡眠時ニ 回復シマス」
なるほど。俺が眠っている間にたまるエネルギー。それを消費して生命維持をするのか。
「試しに一旦、俺の魔源とやらを吸ってみてくれ」
「了解」
ウィル・オ・ウィスプ が俺の腕に吸い付く。最初はちょっとチクっとする程度だったけれど、段々と意識がぐにゃぐにゃとしてくる感覚がしてきた。立ち眩みがしてきた時に、ウィル・オ・ウィスプ が離れる。
「ナルホド 宿主様 アナタハ 魔源ノ許容量ガ ヒクイ」
「そ、そうか? 俺、結構穴掘りを長時間できるけど」
「ソレハ アナホリノ 魔源ノ 消費量ガ ヒクイダケデス」
マジか。俺そんなに体力ない方だったのか。
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