第18話 なぜこいつを戦闘中に出そうとした

 光輝くスポーンブロック。そこから出てきたのは、耳が長くてもふもふの獣だった。目がくりっとしていて中々に愛らしい容姿をしているそれは、周囲をきょろきょろを見回した。そして、俺の姿を見つけるや否やすぐに俺に飛びついてきた。


「うわっと」


 急に飛びつかれたものだから俺は少しだけ体勢を崩してしまった。俺の肩に乗る謎のモンスターを落とさないないように腕で支える。


「やっほー。オイラはグレムリン。今後ともよろしく」


「ああ、よろしく……」


 丁度、俺の肩や頭に乗るくらいのサイズ感で丁度良い。もふもふのグレムリンは俺の上で肩車の要領で座り、すっぽりと落ち着いた。


「なあ、グレムリン。お前戦えるのか?」


「ん? オイラはあんまり戦いとか好きじゃないかな」


 戦いが好きじゃない……? 妙だな。あのイケメンが戦闘中に出そうとしたから戦闘に特化したモンスターだと思っていたのに。


「ところでアンタは何て名前なの?」


「俺は伊藤 大地だ」


「ふーん。じゃあ、ダイチでいいや。よろしくな。ダイチ」


 俺は最近、名前で呼ばれなかったから随分と新鮮な気持ちになった。みんな、俺のことを代名詞で呼ぶんだよな。


「グレムリン。お前の特技とかを聞かせてくれ」


「うーん、オイラの特技ねえ。イタズラが好きかな。後は手先が器用で色んな道具を作ったり分解したりできるよ。機械類とかも弄るのが好きだけど、ここにはそういうのなさそうだねえ」


「なるほど。それは良いことを聞いた。それじゃあ、拠点にある材料でなにか作れないか?」


「おっけー。オイラに任せてよ。ダイチ」


 グレムリンに拠点の場所を教えたら意気揚々と走って行った。戦いがあんまり好きじゃなくて、イタズラと機械弄りが好き。あのイケメン。どうしてダンジョン攻略中の状況でこいつを出そうとしたのか。甚だ疑問である。


 拠点に戻るとグレムリンがドラゴンの骨と鱗を積み上げたものの前でなにやら唸っている。肥料に出来なかった分が溜まる一方で、何にも使い道がなくて置き場所にすら困っているものだ。


「ふーん……中々良い素材があるねえ」


「良い素材? これが?」


「うん。ダイチ。これ好きに使っていいか?」


「まあ、俺が持っていても使い道ないから。好きにしてくれ」


「やったー!」


 こんなものを使って一体何を作るんだろうか。俺は骨を削ってナイフにするくらいしか思いつかなかったけれど。



 翌日、目を覚ました。グレムリンの作業状況が気になったので、彼が作業しているところを訪ねてみた。


「おお。ダイチ。丁度、良かった。これを見てくれ。一晩かけて作ったドラゴンの素材を使って作った剣だよ」


 グレムリンが剣を持っている。それは光り輝く剣だった。金属製の剣を比べても見劣りしないような美しさ。


「な……これをどうやって作ったんだ?」


「それはオイラ独自の磨きの技術を使ったんだよ。竜骨に竜鱗をコーティングして磨いて削ってを繰り返す。そうすることで、ドラゴンの素材の力を引き出したんだ」


 なるほど。よくわからん。俺はその辺の石で骨を削って尖らせるくらいしかできなかったけれど、このグレムリンが持っている技術を使うとそんなものが比ではないくらい凄いものが出来上がるってわけか。


「ご主人君。おはよー」


「おお、ベテルギウスか。丁度良かった。ちょっと変身してこの剣を持ってくれないか?」


「剣を? いいけど」


 ベテルギウスが人間に変身して竜の剣を持つ。中々、様になっているな。


「ちょっとそれを試し斬りしたいな。ついて来てくれ」


 俺はベテルギウスとグレムリンを連れて、羊のモンスターのスポーンブロックがあるところに向かった。


「よし、ここの穴を掘れば羊がスポーンする。ベテルギウス。その羊を剣で倒すんだ」


「うーん、まあ、ご主人君の頼みなら」


 俺は地面に穴を掘った。スポーンブロックが露出して羊が出現。すかさず、ベテルギウスが羊を斬った。たった一撃で羊が真っ二つの肉塊になった。


「わ、わあ……な、なんだこれ。強すぎない?」


 剣を振るった当のベテルギウスが驚いている。


「ふふん。まあ、これがオイラの実力ってわけよ。これからもなにか加工したいものがあったら、オイラに任せてくれると嬉しいな」


「ああ、ありがとう。これからも頼りにしている」


「ご主人君。この剣は凄い。これさえあれば、ダンジョンの第2層を攻略できるかもしれない」


「え!? それは本当か?」


 ベテルギウスのまさかの発言。俺はモンスターを増やすことで戦力を増やそうとしていたけれど……そうか。武器を手に入れることで強化という発想もあったのか。



【悲報】ヤザワが発見したダンジョン。誰も攻略できていない


1 名無しの探索者

これまでのまとめ


・ヤザワ

ダンジョンをダウジングで発見した。

配信中に地底人の女に撃退される。


・レオナ・バインバイン

ダンジョン縛り配信をしている女(本当に自分の体を縛ってる)

目立ちたいだけで戦闘力は特にない。当然のごとく敗走。


鬼島きじま&グッピー

鬼島は炎の能力を持つ覚醒者。グッピーは撮影係。

戦闘向けの覚醒者でも地底人の女に手も足も出ずに敗北。

この戦いで地底人の中には水の能力を有する覚醒者らしき女もいることが判明。


・グラ君  NEW!!

ダンジョン配信者界きってのイケメン。

覚醒者。アイテムボックススキルを使って、スポーンブロックを収納してモンスターに戦わせるテイマー的な戦略を取っている。

地底人3人がかりに敗北


2 名無しの探索者

>>1

スレ立て乙

グラ君もテンプレに入ったか


3 名無しの探索者

グラ君は、元々ダンジョン配信グループに所属していたけれど、覚醒スキルがしょぼいからパーティを追放されたんだっけ?

個人活動に移行してからは、スポーンブロックを活用する戦い方で次々とダンジョンを攻略する実力者になったのに

快進撃が続いていただけに、ここでケチがついたのは残念だなあ


4 名無しの探索者

グラ君の元のパーティはどうなったの?


5 名無しの探索者

>>4

解散したよ。グラ君のアイテムボックスのお陰でダンジョン内でも安定して探索できていたのに、追放したらそらそうよ

リーダーもちょっと戦闘力が高いだけで、サバイバル能力なかったからね


6 名無しの探索者

個人的には鬼島がやられたのがショック


7 名無しの探索者

今のところ、地底人って女ばっかりだな

たまに帽子とマスクをつけた男がチラっと配信に映るけれど、ほとんど戦ってないし


8 名無しの探索者

地底人は女の方が強いんじゃないのか?


9 名無しの探索者

誰かこのダンジョンを踏破してくれる猛者は現れないもんかねえ


10 名無しの探索者

今思ったけど、地底人の女たちってダンジョンの門番的な役割なんじゃね?

私たちを倒す実力がないと、この先のダンジョンに行っても死ぬぞって警告してくる感じの


11 名無しの探索者

>>10

ああ、それはありえるかもね

最初に出てきた地底人の女も、この先には強い狼がいるみたいなこと言ってたし


12 名無しの探索者

入るのに強さを示す必要があるダンジョンか

入る資格はただ1つ。強さを示すことだ!


男の子ってこういうのが好きなんでしょ?


13 名無しの探索者

【速報】ダンジョン配信者のリッパー&チョッパーが、このダンジョンに挑戦することを表明


2人共、Aランクの探索者でしかも覚醒者だしこれは期待できそう


14 名無しの探索者

もし、地底人の門番を倒して、その先のダンジョンに足を踏み入れることができたら……確実に同接数は万を超えるだろうね


15 名無しの探索者

リッパー&チョッパーで無理だったら、もう無理だろ

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