第6話 お別れのとき

「なるほどね」


 宇海うみいたおはなしえたバーハローズがつぶやくようにった。


たしかにあなたたちのおこないは、ほかだれかかられば、地獄じごく確定かくていなくらいわるいことでしょう」


 ふねのみんながゴクリとのどらした。


「でも、わたしはそうはおもわないわ。だって、こんなに勇敢ゆうかん女性じょせいはなかなかいないもの。あなたたちの勇敢ゆうかんさにめんじて、地獄じごくへはかせないように、かみつたえておくわ」


 そうってバーハローズがにこりとわらった。


「よし! ありがとうバーハローズさま!」


 ピカネートがよろこびのこえげると、ほか船員せんいんたちも口々くちぐちにおれい言葉ことばった。


(よかった……)


 よろこんでいるみんなをて、宇海うみ安心あんしんした。自分じぶんかた下手へたなせいで地獄じごくきになってしまったらどうしようと不安ふあんだったのだ。


「あなたをこの世界せかいさせてよかったわ」


 バーハローズが宇海うみにだけこえるようにった。


「え……?」


「ふふっ。だって、あなたもうみ冒険ぼうけんしたかったんでしょう?」


なんでそれをってるの?」


「あなたが神様かみさまにおねがいしたことを、神様かみさまらないとでもおもったの? あなたはいつも頑張がんばっているから、そのご褒美ほうび。ちょうどこの世界せかいにはあなたが創造そうぞうしたような女海賊おんなかいぞくがいたから、わせてあげようっておもったの。あのたちにも、ちょっとたすけが必要ひつようだったみたいだし」


 ね? とってバーハローズが宇海うみにウインクした。


「あ……ありがとうございます!」


 宇海うみがお辞儀じぎをすると、バーハローズは「どういたしまして」とった。


いとしの冒険者ぼうけんしゃたち! あなたたちにはうみかみであるこのわたし、バーハローズと、このちいさな創造神そうぞうしん宇海うみ加護かごがついています! わたしたちの加護かごがあるかぎり、あなたたちはどんな困難こんなんえられるでしょう!」


 バーハローズがそううと、船員せんいんたちはまたしてもよろこびのこえげた。


 それからふねうえうたげもよおされた。バーハローズは魔法まほう人間にんげん姿すがたになり(はだいろあおから人間にんげんおないろわったのをて、宇海うみはびっくりした)、みんなで一緒いっしょにココがつくったご馳走ちそうべた。料理りょうり宇海うみはじめてべるものばかりだったが、どれもとても美味おいしかった。


 わったあとは、サミニクがミリーをかなで、バーハローズがうたい、ほかのみんなはそれにわせておどった。宇海うみにとってこんなたのしいよるはじめてだった。


 がつけば太陽たいよう完全かんぜんしずみ、おおきなつききらめくほしたちがよるうみ支配しはいしていた。うっとりするほど綺麗きれい光景こうけい宇海うみはためいきをついた。


ゆめのような景色けしきだろう?」


 ピカネートが宇海うみとなりった。


「うん。すごく綺麗きれい


 宇海うみこたえると、ピカネートは「そうだろ?」とってわらった。


ってもらえてよかったよ。よるてこの景色けしきるたびに、アタシがしたことは間違まちがいなんかじゃないっておもえるんだ。せまりくして、ひろうみてよかったって。なぁウミ。アンタもアタシたちと一緒いっしょ冒険ぼうけんしないかい?」


「いいの⁉ あ、でも……」


 ピカネートたちと一緒いっしょうみ冒険ぼうけんするなんて、かんがえただけでもこころおどる。でも、すこしだけがかりがあった。ずっとここにいたら、おとうさんとおかあさんが心配いんぱいするかもしれない……。そうかんがえていると、バーハローズがやってきてこうった。


「ああ、ごめんなさいね。この一度いちど、このがいた世界せかいもどらないといけないの」


「え? なんでだい?」


今回こんかい一日いちにちだけっていうまりなの。こののぞんだのが一日いちにちだけだったから」


「あ……」


(そんなことまでってたんだ)


 神様かみさまなんでもお見通みとおしなんだ、と感心かんしんすると同時どうじに、もうかえらないといけないさびしさで宇海うみむねはいっぱいになった。


宇海うみ、そんなにかなしまないで。もう彼女かのじょたちとえないってわけじゃないもの。あなたはさっき素敵すてき物語ものがたりわたしませてくれたわよね。もと世界せかいもどってから、また彼女かのじょたちといたい、冒険ぼうけんがしたいとおもったら、自分じぶんでそういう物語ものがたりいて。それから神様かみさまにおねがいするの。わたしもこんな冒険ぼうけんがしたいですって。きっとまたかなえてくれるわ」


「……はい! またいて、神様かみさまにおねがいします!」


「ええ、是非ぜひそうしてちょうだい」


 バーハローズがにっこりとほほんだ。


「そうか。ウミとはここで一旦いったんわかれになっちまうんだな。それじゃあアンタたち! アタシたちをすくってくれたウミに、しっかりおれいうんだよ!」


 とピカネートがうと、船員せんいんたちが宇海うみまえあつまった。


「ありがとう、ウミちゃん。またえるのをたのしみにしているわ」


 アーレフが宇海うみにぎりながらった。


「ボクの料理りょうりをまたべにてね」


 そうってココは宇海うみめた。


今度こんどわたしにもあなたのいた物語ものがたりませてよ」


 宇海うみあたまをわしゃわしゃとでながらゴルタヴィナがった。


きみ旅路たびじ幸多さちおおからんことを」


 サミニクがミリーをポロンとかなでた。


「ありがとうウミ。これはアタシからのおくものだ。つぎときまで、大切たいせつっていてくれるかい?」


 そうってピカネートは、自分じぶん帽子ぼうしについている虹色にじいろ羽飾はねかざりを宇海うみわたした。


「うん。大切たいせつにする」


 羽飾はねかざりをった宇海うみは、それをとさないように両手りょうてにぎった。


「ピカネートも、みんなも、ありがとう!」


 また絶対ぜったいこの世界せかいるんだ。そうつよおもいながら、宇海うみはおれいった。


宇海うみもと世界せかいもど準備じゅんびはいい?」


「うん」


「それじゃあじて。もと世界せかいおくるわね」


 もうかえらないといけない……でも、またえる。希望きぼうむねいだきながら、バーハローズのとおりに宇海うみじた。


「またいましょうね、ちいさな創造神そうぞうしんさん」


          ☆


 宇海うみけると、そこには自分じぶん部屋へやひろがっていた。カーテンの隙間すきまから朝日あさひがこぼれている。自分じぶんいま、ベッドのうえよこになっている。


ゆめ……だったのかな)


 あれは現実げんじつではかんがえられないような、ゆめのような時間じかんだった。もう一度いちどねむれば、おなゆめられるだろうか。そうおもいながらねむをこすろうとした、そのとき


「あ」


 なかに、虹色にじいろ羽飾はねかざりがある。


 ゆめじゃ、なかった!

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エタリップ海賊団と海の神 みーこ @mi_kof

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