第5話 海ぞくになった日

 ある新月しんげつよる。ピカネートはとある酒場さかばにいました。その酒場さかばにはちょっとしたぶたいがあり、ぶたいのうえではおとこたちが楽器がっきかなでながらうたっています。なかでも目立めだっているのが、ぎんぱつの貴公子きこうしばれるサミニクです。酒場さかばにいるおんなたちはみんなサミニクに夢中むちゅうで、それをほかおとこたちは不満ふまんおもっていました。


 ピカネートは演奏えんそうしているサミニクにちかづき、いました。


「アンタ、おんなだろ。アタシはいま、いっしょにぼうけんをしてくれる仲間なかまさがしてるんだ。アンタみたいなやつがしい」


「ああ、いいだろう」


 これをいて酒場さかばにいた全員ぜんいんがおどろきました。なにせ、だれもサミニクがおんなだとりませんでしたし、とつぜんのもうれるともおもわなかったからです。


 酒場さかば大変たいへんなさわぎになりました。おとこたちは二人ふたりをこうげきしようと武器ぶきりました。ピカネートはサミニクをまもりながらたたかい、そしてちました。


 二人ふたり酒場さかばあとにしてあるすと、うしろからだれかがついてきました。酒場さかばのちゅうぼうではたらいていたココです。ピカネートのたたかいっぷりをてすっかり感心かんしんしたココは、自分じぶんもいっしょにきたいといました。ピカネートはココをこころよくむかえれ、三人さんにんあるしました。


 しばらくあるいていると、どこからかすすりこえこえてきました。三人さんにんこえのするほうあるいていくと、ふるびたいえのかげでだれかがうずくまっていました。


「どうかしたのかい?」


 ピカネートがきました。


ろうさんがんだんだ」


 ゴルタヴィナと名乗なのった彼女かのじょはおとうさんと二人ふたりらしていましたが、おとうさんは病気びょうきんでしまったそうです。ゴルタヴィナはくすりうおかねをかせぐためにけんめいはたらいていましたが、それでもくすりたかくてえませんでした。


「これからわたしはどうすればいいんだろう。ここにいてもかなしいだけだ」


「だったら、アタシたちといっしょにないかい」


 ピカネートはゴルタヴィナを説得せっとくして、彼女かのじょをぼうけんの仲間なかまくわえました。


 夜道よみちあるつづけ、四人よにんおおきなおしきのまえまでました。


「いいかい、アンタたち。いまからここにはいって、あるむすめをすくすんだ」


 ピカネートがいました。


「そのはとらわれているのかい?」


 サミニクがきました。


「ずっと、このしきのなかにね。彼女かのじょそとたがっているのに、それをしきの主人しゅじんゆるさないのさ」


 四人よにんしきのなかはいりました。しんとしずまりかえよるなので、足音あしおとてず、だれにもつからないようにをつけました。


 とらわれているむすめ、アーレフのもとまで無事ぶじにたどりき、彼女かのじょれてようとしたそのとき——


「いたぞ! しん入者にゅうしゃだ!」


 四人よにんつかってしまいました!


「アンタたちはアーレフをれてげな! アタシがコイツらをめる!」


 ピカネートがそういましたが、だれもげようとはしませんでした。


「いくらきみでも、このかず大変たいへんでしょう」


「ボクもたたかうよ!」


わたしにも手伝てつだわせて」


 三人さんにんはそうって、ピカネートといっしょにたたかいました。


 相手あいてかずおおかったので、たたかいはすぐにはわりませんでした。それでもみんなあきらめないでたたかい、最後さいごには無事ぶじにアーレフをれてしきからることができました。


「ありがとう、ピカネート。あなたはとてもゆうかんね」


「アンタをすためならなんだってするさ、アーレフ。さぁアンタたち! これからぼうけんのはじまりだよ! ふねって、うみるんだ!」


 こうしてサミニク、ココ、ゴルタヴィナ、アーレフの四人よにん仲間なかまにしたピカネートは、自分じぶんたちにエタリップかいぞくだんという名前なまえをつけ、ふねり、うみしたのです。

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