第4話 海の神

 それから宇海うみは、ピカネートとアーレフのはなしきながら時折ときおりメモをり、それをもとにおはなしはじめた。ピカネートのかたはなしはとても大胆だいたんで、スリルもあり、そして感動的かんどうてきだった。宇海うみ上手うまけるか自信じしんがなかったけど、アーレフが手伝てつだってくれたおかげでなんとかげることができた。


 そして……。


船長せんちょう! 到着とうちゃくしました!」


 そとからゴルタヴィナの大声おおごえこえてきた。


「あいよ! さあ、ウミ、アーレフ、くよ」


 宇海うみはおはなしいたかみとさないように大切たいせつかかえ、ピカネートにつづいて部屋へやそとた。


「ここにバーハローズさまがいらっしゃるんだね」


「ここの……どこに?」


 そとてその光景こうけいにした宇海うみくびをかしげた。てっきりどこかのしまいたとか、おおきな神殿しんでんがあるとか、なにすご光景こうけいっているとおもっていたのに、まえには夕日ゆうひらされたうみしかない。


「ウミちゃんはバーハローズさまがどんなかたらないのね」


 とアーレフにわれて宇海うみはこくりとうなづいた。


「それじゃあ、きっとビックリするわよ」


 アーレフがにこにことった。


(どんなひとなんだろう……)


「サミニク! 準備じゅんびはいいかい?」


 ピカネートがびかけると、サミニクが「いつでも」とこたえ、ふね先頭せんとうった。


なにをするの?」


 宇海うみがピカネートにたずねた。


「まぁてな。たのんだよ、サミニク!」


 ピカネートの合図あいずでサミニクは相棒あいぼうのミリーをかまえた。サミニクはゆっくりと深呼吸しんこきゅうをしてからミリーをかなはじめ、そのおとわせながら自身じしんうたいだした。



 われらがうるわしの うみかみ

 いにしえよりつたわる 原初げんしょかみ一柱ひとはしら

 いとしきうみまもりし 人魚姫にんぎょひめ

 われらのもとに あらわれよ



(すごく……きれい……)


 サミニクの演奏えんそう歌声うたごえがとても綺麗きれいで、宇海うみおもわず感動かんどうしていた。


 するとその演奏えんそうわせるように、どこからかべつ歌声うたごえこえてきた。その歌声うたごえは、サミニクよりももっと綺麗きれいだ。



 いとしの 冒険者ぼうけんしゃたち

 勇気ゆうき希望きぼうを そのむね

 くさりからはなたれた ひと

 なんじのぞみを なかえよう



 ザパアッ‼


 うたわると同時どうじに、うみからなにかがてきた。


「……‼」


 ふねよりもたかびあがったそのなにかは、上半身じょうはんしん人間にんげんおなじようなかたちをしているが、下半身かはんしんさかなのようなかたちをしていた。


人魚にんぎょだ!)


 人魚にんぎょふねえてまたうみもぐったかとおもうと、すぐにかおうみからした。そのかおて、宇海うみはまたおどろいた。


あおい⁉)


 人魚にんぎょはだいろは、たことはないが宇海うみっている外国がいこく映画えいが登場とうじょうする人物じんぶつのようにさおだった。


「ね。ビックリしたでしょ?」


 アーレフが小声こごえってきた。宇海うみは「うん」とうなづいた。


わたしんだのはあなたたち?」


 人魚にんぎょった。とてもんだこえをしている。


「いかにも。我々われわれはエタリップ海賊団かいぞくだんはサミニク。こちらは相棒あいぼうのミリー。そしてこちらにおわすのが、船長せんちょうのピカネート・エタリップ」


「どうもはじめまして。アタシはピカネートだ。アンタがバーハローズさま間違まちがいないね? バーハローズさまたのみがあってたんだ」


 ピカネートが帽子ぼうしぎ、ふねからしながらった。かがかみかぜでふわりとれた。


「ええ、わたしがバーハローズよ。あなたたちはわたしなにたのみたいの?」


「アタシたちがんだあと地獄じごくちないようにしてほしい」


「あら、どうして?」


「アタシたちがしたことは、他人たにんからればわるいことをしたから地獄じごくくのも当然とうぜんかもしれない。でも、アタシたちにとってはいことをしたんだ」


自信じしんたっぷりね。きらいじゃないわ、そういうは。でも、あなたの主張しゅちょう証明しょうめいするものでもあるの? くちだけならどうとでもえるわ」


「もちろん。なんたってこっちには創造神そうぞうしんがついてるんだ。ウミ、いたものをバーハローズさまわたしてやって」


「うん!」


 宇海うみ緊張きんちょうしながらふなべりにり、おはなしいたかみをバーハローズに手渡てわたした。


「へぇ、あなたが創造神そうぞうしん? そのわりにはずいぶんおさないようだけど……でも、いの創造神そうぞうしんだけなら大人おとなとはえないものね」


 そういながらバーハローズは宇海うみからかみり、宇海うみいた海賊かいぞくたちの物語ものがたりはじめた。

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