第3話 神様に会いに行こう

「それでピカネート。そのはどうするの?」


 アーレフがいた。


「コイツはなんてったって創造神そうぞうしん神様かみさまだからね。交渉こうしょう道具どうぐ使つかうよ」


交渉こうしょう⁉」


 ピカネートの言葉ことばに、宇海うみはびくりとからだふるわせた。彼女かのじょわるひとにはえなさそうだけど、それでも海賊かいぞくだ。海賊かいぞくがわたしを交渉こうしょう道具どうぐ使つかう……人質ひとじちにされちゃうの?


「ああ、ウミ。そんなにおびえることはないよ。なんうか……そう。アタシたちをたすけてほしいんだ」


たすける……?」


「アタシはわるいことをしたとはおもってないんだけど、わるいことをしたってってくるやつもいる。ひとさらったとか、オレをった、とかってね。ちなみにひとさらったってのは、アタシがコイツらをさらったってことなんだけど、アタシとしてはさらったんじゃなくてすくったんだ」


「あの新月しんげつよる逃避行とうひこうは、じつ心躍こころおど冒険ぼうけんだったよ」


 サミニクがミリーをポロンとかなでながらった。


「ああ、あれは最高さいこうだったね。で、アタシがあのおとこったのは」


「「「「あのおとこ間抜まぬけな腰抜こしぬけだったから」」」」


 今度こんど船員せんいんたちがくちそろえてった。


「そのはなしきたよ船長せんちょう


「このにまでかせるんじゃないよ」


 ココとゴルタヴィナがあきがお文句もんくった。


どろなかにつっこまされた挙句あげく盛大せいだいわらわれたら、だれだっておこるわよ」


 とアーレフ。


「あんな簡単かんたんわなにハマるほうがおかしいだろ。……はなしもともどすけど、そうやっていろんなひとからいかりをったから、地獄じごくちるかもしれないんだ。でも、だれだって地獄じごくにはきたくないだろ? だからいま地獄じごくきにしないでくれってたのみにいく途中とちゅうなんだ」


「そんなこと、だれたのむの?」


 きているうちにたのめるものなのだろうか。そうかんがえながら宇海うみあたまをひねっていると、ピカネートがニヤリとわらった。


神様かみさまたのむにまってるだろ。アタシたちがこれからいにくのは、うみかみ、バーハローズさまだ」


神様かみさまに……?」


 宇海うみはポカンとしたかおでピカネートを見上みあげ、それからほか船員せんいんたちのかおた。ピカネートの神様かみさまたのむという大胆だいたん発想はっそうおどろいているひとはいない。みんなすでにそのことをっているのだ。


「でも、神様かみさまってどうやってうの? ていうか、本当ほんとうにいるの?」


 宇海うみくと、ピカネートは盛大せいだいわらった。


「あっはっは。神様かみさまがいないっていうなら、創造神そうぞうしんであるアンタはなんでここにいるんだい? それに神様かみさまはそこらじゅうにいるもんだろ?」


昨日きのうみずかみのアグリアさまったものね」


「アグリアさまからバーハローズさま居場所いばしょいたもんね」


 ピカネートのあとにアーレフとココがつづけてった。うそっているようにはえない。この世界せかいには本当ほんとう神様かみさまがいるんだ!


「そういうわけだから、アタシたちはこれからバーハローズさま生前交渉せいぜんこうしょうしにくんだ。アンタにはそこでアタシたちが悪人あくにんじゃないことを証明しょうめいしてほしい」


証明しょうめいって……どうやって?」


「アンタ、自分じぶんでおはなしいたってったよね。アタシたちがどうして海賊かいぞくになったのか説明せつめいするから、それをおはなしにしてくれないかい? 創造神そうぞうしんのお墨付すみつきがあれば、バーハローズさまだって納得なっとくするだろうさ。よし。そうとまれば早速さっそく行動こうどうだ! アーレフ、このかみとペンとインクをわたしてあげて! ココ、バーハローズさまのほっぺたもちるような美味おいしい料理りょうりつくるんだ! ゴルタヴィナ、ふね速力そくりょくげて! バーハローズさまもとまでぱしるよ!」


 ピカネートが号令ごうれいすと、みんなわれたとおりにうごした。


船長せんちょう我々われわれ使命しめいあたえないのか」


「あー……サミニクはバーハローズさまれるようなきょくつくっておいて」


「ふむ。なかなかに難題なんだい課題かだいだね。うるわしの女神めがみはどのような旋律せんりつがおこのみだろうか。それをかんがえるのもまた一興いっきょう


 ミリーをかなでながらサミニクがった。


「ウミはアタシと一緒いっしょ船長室せんちょうしつて。つくえがあったほうがきやすいだろう」


いまからくの?」


「もちろん。ヴィーナがふね速度そくどげてくれれば、バーハローズさまところへはちるまえにはくはずだからね。それまでにウミにはアタシたちの物語ものがたりいてもらうよ」


「は、はい!」


 とても重大じゅうだいなことをまかされたな、と宇海うみおもった。いままでは自分じぶんかんがえたおはなし自分じぶんきなようにいてきたけど、いまからはこのひとたちが地獄じごくちないようにするためのおはなしかなきゃいけない。しかもそれを神様かみさままれる!


 本当ほんとうにここが自分じぶんいた小説しょうせつなかなのか、それともただているだけの世界せかいなのかはからないけど、せっかく出会であったひとたちが地獄じごくくのはさびしすぎる。うみちたわたしをすくってくれたなら、今度こんどはわたしがこのひとたちをすくいたい。そんなおもいをいだきながら宇海うみがピカネートにれられて船長室せんちょうしつくと、そこではすでにアーレフがかみとペンとインクを用意よういしてっていた。


わたしもおはなしくお手伝てつだいをするわ」


「ありがとう、アーレフ。さあウミ、ここにすわって。まずはアタシたちのはなしいてもらおうか」

「よろしくね、ウミちゃん」


 宇海うみがイスにすわると、ふねうごきがわるのをかんじた。さっきよりもふねはやうごいている! どこからか美味おいしそうなにおいや、楽器がっきおとこえてきた。ほかのみんなも、それぞれの仕事しごとかったのだ。


(わたしも、頑張がんばろう!)


「よろしくおねがいします!」

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