第118話 新たなる憂鬱

 〘お邪魔しました〙

〘またね、数くん、螢ちゃん〙


二人が帰ると賑やかだった病室は途端に静かになった。


「全くあの男にも困ったもんだな…」


螢の頬に触れる。

元々白い肌が透明感がまして雪のようだ。

顔中にある無数の雀卵斑が星を散りばめたように肌を飾る。


俺はこの星空のような雀卵斑が幼い時から好きだったから…それをバカにして螢を泣かせるヤツが許せなかった。


「螢…可愛い…」


彼女を見つめながら口にした言葉に螢は忽ち白い肌を赤く染め始める。


俺が顔を近づけると瞳に熱が帯びる。

そんな彼女が愛しい…


「何処にも行くなよ」


鼻と鼻が触れそうな距離だ…


「行かないよ…数くんの手を離したくない」

「大丈夫だ…俺が絶対離さない!」


螢が可愛くて…可愛くて…

今更ながら嫁にもらえた幸せを感じていた。


「螢…大好きだ」


もう我慢できなくて、何度も唇を重ねる。

可愛い螢は俺の手の中で白い肌を赤く染めていく。つい…抑えきれず…這わせた唇で赤い華を幾つか咲かせてしまう… 


「ごめんな…螢」


謝るくらいならしなければいいのに…

そう思いつつ、螢を前に気持ちを抑えられなかった自分がいたのも事実だ…


「わたし…数くんのお嫁さんで凄く幸せ…

こらからもずっとわたしの傍にいてね」


俺は螢があんまり可愛いことを言ってくれるのでまた力いっぱい抱きしめた。



今日は父さんと母さんがエリックのところから帰って来ると昨夜連絡がきていた。


「お義父さん何か言ってた?」


螢が心配して声をかけてくれる。


「父さんはその男と吾古の付き合いを認めたらしい」


俺は少し納得がいかない…


「数くん…お父さんがそう決めたんなら大丈夫だよ」


螢が俺の手を握ってくれる。

吾古は大事な妹だから心配だ。


アイツは末っ子で甘やかされたから過保護に育てられたところもある。

俺も翔真も可愛い妹にベタベタだったし、何よりも父さんが初めての女の子で特にベタベタに育てていた。


そんな大事な妹が選りに選って初めてのボーイフレンドが多重人格者だなんて…


父さんが会って話しをしたからある程度安心だと思うが、それでも不安は拭えない…


くそっ!

俺の妹を泣かせてみろ!

必ず殴ってやる!!







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