第119話 退院間近
螢の退院が1週間後に決まった。
急変が起こらないことを願うのみだ。
回復に時間がかかり、退院も延び延びになっていた所為で、同じ手術をした人が先に退院するのを見て不安にしていた螢には朗報といっていい。
俺の腎臓は螢の中で上手く機能しているようで今のところ拒絶反応も無く良好。
今まで食べられなかった物が食べられるようになり、螢は毎日幸せそうな顔を見せている。
尿道のカテーテルも抜け、一人でトイレに行けるようになったのも嬉しいようだ。
「数くん…数くん…」と、嬉しそうに話してくれる。
〘数真さん…〙
螢の病室へ向かう途中で、ジェシカがなんだか神妙な顔で話しかけてくる。
〘どうしたんだ?〙
アイリスと何かあったのかと心配になる。
〘螢さんの退院決まったんですよね…〙
〘ああ…〙
ジェシカは少し躊躇してから、やっと口を開いた。
〘退院しても…数真さんと螢さんのところへ遊びに行っちゃダメですか?〙
意外な質問だった。
よく考えたら、病院内で知り合ったからといって、 連絡先を交換でもしない限りそれっきりだ。
退院しても関係が持てるのは嬉しかった。
齢は離れているが、それでも良い友人には変わりなかったし、可愛い弟と妹と云った感じだったからだ。
〘なんだそんなことを心配してたのか?
俺も螢も良かったらずっと友だちでいて欲しいよ!〙
俺は素直な気持ちを伝えた。
〘ありがとう!嬉しい!アイリスもきっと喜ぶよ!ずっと気にしてたから〙
ちょっと緊張気味だった顔が俺の返事で安心したのかホッとした表情になっている。
〘遠慮なんてアイリスらしくないな〙
いつも言いたいことをズバズバ言うくせに、こんな事は気にするのかと少し可笑しくなった。
二人で螢の病室へ入るとアイリスがいる。
螢の腕に絡まりにこにこ顔だ。
『ははぁ〜 これは螢からOKを貰ったな』
〘なんだアイリス、今日は随分ご機嫌だな〙
俺はわざとアイリスに訊いた。
〘あのね…わたしもやっと来月退院出来るの…螢ちゃんが退院しても友だちでいてくれるって〙
えへへ…と、含羞をんだ笑顔を俺に向けた。
〘えっ?! おめでとう!
アイリスは長かったから退院なんて良かったな!〙
俺はアイリスの頭を撫でて喜びを伝えた。
〘ありがとう数くん!これからもよろしくね!〙
その日は可愛い友人と連絡先の交換を4人で自分の携帯に入れた。
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