第107話 面会 中篇

 〘エリック、子どもたちが悪いな〙

〘なんの、なんの、俺の方は賑やかで大歓迎さ。でもあるしな〙


翔吾の言葉に、エリックが軽く答えるので翔吾としては幾分面白くない。


〘エリック元気だった?〙

〘勿論だとも、毎年愛しの君が顔を見せてくれるのを楽しみに躰に気をつけてるよ〙


エリックは近づいた真古都の手を取ると指先へ軽くキスを落とす。


〘もう、相変わらずだなんだから…〙

〘何言ってるんだ。何処にいてもマコトを想う俺の気持ちは、たとえ海の水が全て干し上がっても変わらず溢れてるさ〙


エリックの真古都に対する甘い言葉を翔吾が歯噛みしながら訊いてるのを、翔真と吾古は苦笑いするしかない。


〘んっ!んっ!真古都、やる事を先に済ませるぞ〙


文句を言いたくても言えない翔吾は真古都へ話しを振った。

翔真も吾古も笑いを堪えるのに必死だ。


〘そうだね、吾古ちゃん行こうか〙

〘はぁ〜い〙


〘翔吾が抱いてる子は誰の子だ?〙

出かけて行った翔吾たちを見てエリックが翔真に訊いた。


〘兄貴のとこの子どもだよ。螢姉の父さんが連れてきたのを引き取ったんだ〙

〘相変わらず面白い家族だな…〙




「ほらっ、タマモ高い高い…」

「あ〜」


翔吾はタマモと遊んでやりながら歩いている。

そんな翔吾を見て、気持ちを切り替えているんだな…と、真古都は思った。


懐かしい宿舎が見えてきた。


〘フレディ!〙

吾古は手を上げて走り寄って行く。


〘こ…こんなところまで…来て…くださって…あ…ありがとうございます〙


〘お前がフレデリックか〙

翔吾が静かに訊いた。


〘は、はい!〙

〘俺は吾古の父で翔吾•瀬戸、こっちが妻の真古都だ〙

〘よろしくね〙


〘取り敢えずお茶にしようよー〙

吾古がガーデンテーブルに皆んなを呼んだ。


カタカタ…カタカタ…と、お茶を注ごうとするフレディの手があんまり震えているので、ティーポットから音がする。


〘吾古ちゃん代わりにしてあげたら?〙

〘そ…そうだね〙

真古都の言葉に吾古が代わってお茶を注ぐ。


その間に翔吾の質問にフレディが答える形で話しが進んでいった。

フレディはどんな質問も丁寧に答えていく。


暫くすると、マックスやキースとも翔吾は淡々と話していった。

話しの内容もただの世間話だったり、趣味だったり、これといって大層な話しをしているわけではなかった。


〘そろそろ行くか、真古都〙

〘そうね、美味しいお茶もご馳走になったし、楽しかったわ〙


椅子から立ち上がる二人をフレディも吾古も不思議な面持ちで見ている。


〘あ…あの…他には…〙

フレディが思い切って訊いた。


〘他に何がある?会いに来ると言ったから来たんだ。病院この中にいるんではお前から挨拶に来れないだろう?〙


〘それじゃあ…アコちゃんと別れなくていいの…?〙

〘なんだ…別れろと言って欲しいなら言ってやるぞ〙


フレディはブンブンと思い切り頭を振った。


〘俺の大事な娘だ。泣かせるなよ〙

〘はい!はい!勿論です!〙


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一周年!

今日、5月13日はわたしの誕生日でもあるんですが、カクヨム様に投稿を始めてちょうど一年になります!

つまり、このお話しも書き始めて一年になるんです。

ずっと読みに来てくださってる方、本当にありがとうございます。

これからも応援していただけると嬉しいです。

わたしの作品を読んでくださる全ての方に感謝をこめて…


 

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