第88話 不安を抱えて
数くんが移植のドナーに決まった。
わたしの躰の中に数くんの腎臓が入る。
わたしは数くんに助けてもらってばかりだ。
初めてお父さんに連れられてこの家に来た時、数くんはまだ小さくて可愛かった。
わたしの傍にはいつも数くんが一緒だった。
数くんは小さいのに、わたしのことを可愛いってよくいってくれた。
わたしの方が大きいからお姉ちゃんなのに…学校で虐められて泣いて帰ってきた時もずっと傍にいて慰めてくれた。
数くんはいつだってわたしに優しかった。
そんな数くんが大好きでずっと傍にいたいと思うようになった。
でも現実と理想は違う…
数くんは亡くなったお父さんによく似て、大きくなる度どんどん素敵になっていく。
わたしは皆んながバカにするような赤毛で、顔中雀卵斑がついている。
中学で再開した時には、わたしはもう病気が再発してた…
大きくなったら可愛い女の子を彼女にするんだと思っていたのに…数くんはいつでもわたしの傍にいてくれた。大好きな数くんが…わたしを好きになってくれて…傍においてくれて…お嫁さんにしてくれた…
幸せだ…わたしは世界で1番幸せだ…
しかもこんどはわたしに自分の腎臓をくれる…数くんはわたしの気持ちを考えて何でもないように言ってくれるけど、ふたつある腎臓がひとつになったら大変なことだ。
それだけわたしは数くんから想われてる。
わたし…絶対元気になるからね…
腎臓をくれた数くんのために絶対元気になるから…
マモちゃんにも、元気になったら今まで出来なかったことをたくさんしてあげよう…
躰が辛くて抱っこも少ししか出来なかった…
おやつもたくさん作ってあげたい…
マモちゃん…
元気になったらいいお母さんになれるように頑張る…
手術までまだあるのに…
毎日毎日不安でどうにかなりそうだった…
それでも毎日手を握ってくれて、
「大丈夫だ螢」
そう言ってくれる。
数くん、わたし怖いよ…
手術怖いよ…
お願いだから傍にいてね…
「螢は本当に怖がりだな」
数くんがベッドの中で手を握って話す。
「大丈夫、手術はうまくいくよ」
「数くん…」
「俺はお前を元気にしてやりたい…
今まで病気でできなかった事を、これからはたくさんして欲しい…
来週には父さんも母さんも来てくれる。
母さんにたくさん甘えればいい」
「ありがとう数くん…
わたし、手術怖いけど頑張るね」
「ああ…どうか俺のために頑張ってくれ」
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