第85話 家族として

 俺たちはまたこの家に戻って来た。

俺たち3人の家だ…


「今日からまた3人で頑張らないとな」


俺は愛しい嫁さんと子どもに言った。


「あ〜あ〜」


タマモが手を伸ばして抱っこをせがむ。

俺が抱き上げるとキャッキャッと喜んだ顔になる。


「タマモ、あんまりお母さんに手を焼かすなよ」


タマモはにこにこ笑っている。抱っこされて嬉しいのだ。


螢がお茶の用意をしてくれた。

キッチンでお茶を淹れる螢があんまり綺麗で胸の高鳴りが抑えられない。


「あう〜あう〜」


タマモが俺の胸を叩いて我に返った。


「タマモ…お母さん綺麗だな」

「あ〜」


当たり前だと言わんばかりにタマモは声を出して俺に抗議した。


「どうしたの?」


螢が不思議な顔で俺たちを見る。


「いや…お母さんは綺麗だなってタマモと話してた」


「もう…そんなこと言ってくれるの数くんだけだよ…」



螢はあの茜色の髪と雀卵斑で子どもの頃からよく揶揄われていた。


彼女が学校に上がってすぐの頃、泣いて帰ってきた事があった。

自分も学校に上がるようになって螢の泣いてる意味を知った。


彼女にとって赤毛と雀卵斑はずっと揶揄われる対象だった。

でも…

俺は螢の髪は大好きだ。

雀卵斑も気にならない。


こんなに可愛い女の子なんてどこにもいないのに…


「螢、明日は皆んなで買い物に行こうか」

「うん」


タマモの物を買ったり、食料品を買ったりしてショッピングモールを3人で見て回った。



〘数真、久しぶり。帰ってたのか〙


オープンカフェで休憩しているところへ先輩から声をかけられた。


〘螢ちゃん久しぶり〙

〘こんにちわ〙


先輩は会社の備品の補充だと、事務の女性と一緒だった。


〘こんにちわ、貴方が螢さん〙

〘はじめまして〙


事務の女性は螢を見て可成りびっくりしている。元々色白な螢だが、病気の所為で余計白く見える。その上中々体重も増えてくれないからいつまで立っても痩せたままだ…


〘ちょっと瀬戸くん、奥さん大丈夫なの?〙


彼女が心配して訊いてくれる。


〘少しは外に出して歩かせないと…

でも無理はさせませんから大丈夫です〙


〘心配ないさ、なんたってコイツは嫁さんをベタベタに溺愛してるんだから〙


〘良いでしょう!自分の嫁さん溺愛して何が悪いんですか!〙


先輩の揶揄いにも慣れてきて、言い換えした。


〘今度は是非家にも来てくださいね〙


螢が笑顔を向けて挨拶してくれる。


〘螢ちゃん、近いうち寄らせてもらうよ〙


俺は螢とタマモを連れて先輩と別れた。



〘ちょっと、貴方本当に瀬戸くんの家に行くつもりなの?〙


〘えっ?何度も行ってるよ。螢ちゃんが夕食をご馳走してくれるんだ〙


〘だって、どうみたって寝てた方がいいのに…〙


〘数真も判ってるよ。だから食事と子どもの世話しかさせてないみたいだ。あとは数真が手伝ってる〙


〘あんな王子様みたいな瀬戸くんからそれだけ溺愛されて、螢さん幸せね〙


〘いや、あれだけ出来た女を嫁にもらった数真が幸せなんだよ〙



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