第82話 レシピエントとドナー
「移植か…」
螢にの父親が俺たちに視線を移してきた。
「勿論、俺は自分の腎臓を提供します。でも、何人かの候補は考えておくよう言われました」
俺は医者から言われたことを皆んなに伝えた。
「螢ちゃん、やっと移植出来るようになったのね」
母さんは螢を抱きしめて喜んでいる。
「移植が済めば今より体調も安定するし、できる事も増えてくる。良かったな」
「翔吾くん、ありがとう」
移植すれば全てがOKになる訳じゃないが、今よりは躰にかかる負担が少なくていい。
何より移植後、安定すれば出産も可能とされている。螢は子どもが産めるかもしれない。
あれだけタマモを可愛がっているんだ。
出産も経験させてやりたい。
「移植すれば終わりではない。判ってるな数真」
「大丈夫だよ父さん」
移植すれば健康な時と同じ様な生活がおくれる。
螢がしたいなら復学する事も、働く事も出来る。
しかし、その為には移植腎を拒絶反応を起こさないよう薬を飲み続け気をつけなければいけないことはたくさんある。
生活習慣に気をつけ定期的な検査も必要だ…
ひとりでは大変な事も、二人なら頑張れる。
俺が傍で螢を支えてやるんだ!
「言うのは簡単だがこれからずっとなんだ…気負わずに二人して頑張ってくれ。数真、頼むぞ」
「はいっ!」
螢の父親からそう言われ、彼女のことを任されている責任が嬉しかった。
「数くん…本当にいいの?」
螢がベッドの中で不安そうに訊いた。
「どうした?」
「だって…数くんの腎臓貰ったら…数くんもずっと検査とか大変になっちゃうのに…」
やっぱり螢は可愛いな
「俺のことは心配するな。俺は、お前に腎臓をあげられるなら嬉しい。お前の中で離れていても護ってやることが出来るから」
「数くん…ありがとう…そんなふうに言ってもらえるわたしは凄く幸せ…」
俺の胸に顔を埋めて螢が囁く。
螢が幸せなら、俺の方がもっと幸せだ。
螢を幸せにする為に俺は頑張ってるのだから…
「小さい時からずっと一緒だった数くんと、これから先も一緒なんて夢みたい…」
螢がまた可愛いことを言ってくれる。
「何言ってるんだ、ずっと一緒だったんだから、これからも一緒なのは当たり前だろ」
螢が父親に連れられて、あの家で一緒に生活するようになった時から、俺たちはずっと家族だったんだ。
あんまり当たり前すぎて気が付かなかったけど…
俺は初めて螢に逢ったあの時から、この赤毛のお姫様に恋をしたんだな…
俺の腕の中で笑ってくれる螢を元気にしてやりたい
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