第166話 幸せの青い鳥 後篇

 「数真!!」

数くんがびっくりしてる私の腕から数真くんを引き剥がすと、床に座らせぬいぐるみを代わりに持たせている…


「真古都さんは僕のだから!数真はそっちにしなさい!」


数くんがわたしを胸に抱き寄せて、数真くんに言ってる…


「そ…そんなに強く言わなくても…」


何も子ども相手に向きにならなくても

これくらい可愛いもんなのに…

と思いながらも

突然の出来事にどう対処していいか困る…


「ダメだよ真古都さん!

こう云う事は親子でもはっきりさせないと!」


何時になく数くんが強く言ってくる。


「うー」


数真が渡されたぬいぐるみを数くんに向かって投げた…



「あー…あこしゃん…しゅき…

あこしゃん…あーいいねえ…

あこしゃん…いーばん…」


数真くんは向きになっている数くんを気にする様子もなく、得意気に話している。


「あこしゃん…らきた」

「数真!!」


数くんが突然大きな声を出したかと思ったら、数真くんを持ち上げた…


真っ赤な顔で慌てている数くんとは反対に、

数真くんの方は高い高いをしてもらってるつもりなのか、彼の手の中できゃっきゃっと喜んでいる。


『数真のヤツ…一体いつこんな事覚えたんだ?

まさか普段何気なく言ってる独り言を聞いてて…』


「ど…どうしたの数くん…」


真古都さんが複雑な表情で僕たちを見てる…


「真古都さん!気にしなくていいから!」


『全く…油断も隙もあったもんじゃない!

選りに選ってこんな恥ずかしいことを覚えるなんて!』


数真を見ると褒めてもらいたくて得意そうな顔を僕に向けている…


『…父親としては褒めてやりたいけど…

男としては褒めたくない…』



「なんか複雑だなぁ…

数くんみたいなこと言って…」


真古都さんは呆れたようにお茶の用意を始めた。


僕みたいなこと…か…


「数真…お父さんがいなくなって…

もし真古都さんが泣いてる時は今みたいに慰めてあげて…」


僕は抱き抱えた数真の頭を撫でながら話しかけた。


「あう…あうー」


数真はやっぱり得意気に手を振り回している…


「頼むよ…数真…

あ…でも “抱きたい” は、言わなくて

いいから!」


僕は子ども相手にと思いつつ、万が一の為に念を押した。


「あうー…あこしゃん…あーいい…

うっとぉ…いっしょおー…」


数真は話せてるのが嬉しいのか、余計な事まで言い始めた。


「あこしゃん…

うっとぉ…あうれないれ」

「か…数真!!」


自分が言った独り言とは云え、聞いてて恥ずかしくて仕方ない…

一体どれだけ覚えたんだ?!


「もういいから!

よく、喋れるようになったね 偉いぞ」


「うー」


数真は僕が褒めたのが嬉しいのか笑顔でご機嫌だ。


「お茶の用意出来たよ~」


真古都さんが呼びに来てくれる。


「真古都さん有り難う…」


僕と真古都さんがキスをすると数真が騒ぐ


「あこしゃん…あこしゃん」


数真はまた真古都さんに自分の顔を近づけていく…


「こんなにいっぱいキスしてもらって

お母さん幸せだよ…

数真くんはお父さんとお母さんの

幸せの青い鳥だね」


真古都さんは嬉しそうに話してるけど…


僕には恥ずかしい事ばかり覚える

九官鳥かな…













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