第10話 連絡と100均巡り

「それじゃあ、また明日会議してほしいのだけど大丈夫かしら?」

「ええ、明日も時間は空けておきますので大丈夫です。また、詳細の日時が決まったら打合せしましょう。メールを入れていただければ、確認し次第返事をさせていただきますね」

「ええ、よろしくね」


 先輩との共同作業が決定した後、詳細はメールでやり取りをすることにしてその場では解散した。

 ちなみに、天道先輩が僕の場所まで来られたのはスマホの位置情報から探索できたらしい。会社のスマートホンは、セキュリティの関係上位置情報が常にONになっていて社内であれば専用のPCから探索できるようになっているらしい。



「明日から自分の仕事内容が変わることは、課長経由して連絡が言っているはずだし。むしろ課長は僕サイドの人になっているはずだから、仕事を抜け出す口実になって助かるな」


 正直、作業服とはいえ汚れ仕事はそこまで得意じゃない。使っている工具が濡れるのは我慢できるが、自分の使っている軍手がビチョビチョになっていてそれを一時間以上装着しているときもザラ。作業中はできるだけ意識しないようにしているが、ふとした瞬間に意識したらゲームオーバーだからね。


 そんな仕事から少し距離を置けるなら、助かるってものだ。それに天道先輩も悪い人じゃないというか、人間出来すぎている気がするけど。



「おお、神崎。例の件だが、天道さんのことをしっかりバックアップしてあげてね。多分、できることは少ないだろうけど学べることは学んでおいてくれ」

「はい、わかりました。あの、この一件に関してですが、すでに先輩のほうには連絡が回っていますか?」


 一応課長がすでに手をまわしてくれているのかを確認。職場での報連相は大事だと習ったが、これは自分の身を守るために重要なのだ。

 この一つの作業で、自分の面倒ごとが大幅に削減できるのであればいいでしょ。それにみんな助かるよねってこと。


「ああ、一応メールは出しておいたけど自分の口から一度説明しておいてくれ。あっちも神崎の口から正式に連絡があったほうが納得できるだろうしな」

「わかりました。ありがとうございます」

「はいー、じゃあよろしく」


 そういって課長は慌ただしく自分の席に戻っていった。すぐに机の上の荷物を片付けて、カバンを抱えて事務所から出て行ったところを見るに、次の会議か何かがあるのだろう。


 上役になると、ああした無駄な会議と仕事で忙殺されるから悩みどころだよね。今の給料だと、貯金もできない自滅まっしぐらだけど責任と給料は比例しているのだろうなぁと思う。


「ってことは、課長がメールを忘れる前提で行動するべきだな。となると、すぐにでも先輩を見つけて伝えておかないとなぁ」




 先輩に今後不定期に仕事を抜ける可能性があるこ。メールの確認を定期的にできる環境が欲しいこと。場合によっては、急に予定が入るから工事に参加できないことがある旨の連絡をした。その際に言われたのは、予めわかったことは共有すること。先輩だけじゃなく、部長にも連絡をすること。課長の承認はあるけど、筋は通すことって言われたので今日はその連絡をしていたら、一日が終了してしまった。





 仕事が終わり、僕はまっすぐと帰宅......ではなく、近所の100円均一ショップをめぐっていた。最近発売された、アウトドア道具を買うためだ。

 ダッチオーブンが1000円で入手できるとのことで、鍋自体の厚みやサイズには正直不安がある。でも、本気で買おうと思えば諭吉様がお亡くなりに無くられることを考えると、正直全然ありだと思う。


「そもそも、一人で使うことが前提だからあのサイズ感でもあんまり問題ないと思うんだよね」


 グループ活動を一切しない僕からすると、正直サイズが問題になることは少ない。むしろ、大きくて困ることのほうが多いから。


「でも、予想をしていたとはいえ、全く見つからないとは。これで3件目なんだが。今日もダメだったか」


 近所にある100円ショップを三件ほどめぐってみたが、成果はゼロ。何が問題って、距離がソコソコあることと時間が無くなること。まぁ、一人暮らしをしているから時間は有り余っているのが正直なところなのだが。


「調査し始めてから、すでにこれで一週間。全部からぶりとは、これやいかに」


 自分の運のなさをここまで呪うことになるとは。しかも、その間にいいものを見つけたり消耗品があれば購入しているからね。ここまでで購入した余計なものは、


・除菌シート

・ビニール袋

・密封袋

・固形燃料

・燻製チップ

・化学性の着火剤


 意外に思われけど、今時レジ袋をもらえないのでビニール袋をコンビニや100均で購入することも多い。アウトドアでは、如何にしてゴミを出さないか。出したごみを、衛生的に持ち運びするのかを考える必要があるから、大事なのだ。


「まぁ、ダッチオーブンはまた明日かなぁ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る