第4話 風俗店 確信編
あの風俗店で【ななみ】と書かれた札を掛けた拘束されたラバー人形を見てから1年が経過した。
俺はあの出来事の3ヶ月後に七海と結婚した。
式には【ななみ】の札を掛けてラバー人形をしていたという七海の友人 由里子も来ていたが、風俗店の事を聞けるはずもなく、何事もなく式も終わり新婚生活がスタートした。
平穏な新婚生活を送っていた。
俺は月に一度の出張で家を空けることはあったが、それ以外で七海に不審な行動は見られなかった。
ある時、出張が思いがけなく早く終わった。
翌日帰宅予定だったが、上司も同行だったため、帰らざるを得なくなった。
新幹線を降りて、在来線で自宅へそのまま帰る予定だった俺の目に思わぬものが飛び込んできた。
それは、七海の友人である由里子の姿。
世間は狭いもので、上司が新幹線の中で頻繁に連絡を取り合っていたのが、由里子だった。
上司は俺に「お疲れ!」の一言を残して由里子の元へ駆け寄り、雑踏の中へと消えて行った。
人の色恋沙汰には興味がない。
むしろ、由里子を見た事であの疑惑を確かめに俺の足はあの風俗店へと向かった。
俺は無理に自分を納得させようとしていたが、やはり心のどこかにあの事が引っかかっていた。
モヤモヤする頭をはっきりさせようと、気づけば例の風俗店の前にいた。
店に入り待合室に通される。
通された部屋は以前と同じ真ん中の部屋。
中には拘束されたラバー人形がいる。
すぐに立ち去ろうとする店員に聞いてみる、ほかの待合室にも同じ拘束されたラバー人形がいるのかと。
店員は答える。
手前の部屋にはミイラ女、奥の部屋は真空パックされた女だと。
お好みなら他の待合室にも変更が可能だと言ってきたが断った。
そそくさと待合室を立ち去ろうとする店員を引き留めてさらに聞く。
店員は少し怪訝そうな顔をしながらラバー人形のもとへ行き、名前と札の裏の写真の人物はラバー人形本人だと教えてくれた。
店員に見せられたラバー人形の首から下がる札の名前と裏側の写真を見て、溜息をついて俺は店員よりも先に待合室を出た。
店員の声が後ろから追いかけてくることもない。
おそらく、変な人物だと分類されたのだろう。
それでも一向に構わない。
ただ、七海が今もあの仕事を俺に黙って続けている事が悲しかった。
いつも、悲しい気持ちでこの道を駅へと向かう。
そして、絶望し電車に身を投げたい気持ちになるが、結局のところラバーで顔が隠されているので、七海でないと思いたい自分がどこかにいた。
店員に説明してもらっても、実は七海にそっくりな女性ではないのかなどと思ってしまうのだ。
ホームに入ってきた電車に乗る。
乗客はまばら、席に座り目を瞑り項垂れる。
“七海は風俗で働くのががいいのか?それともラバーで拘束されるのがいいのか?“
俺の中でこんな疑問が浮かんできた。
家に帰り、七海の帰りを待とうかとも考えたが、帰ってきた七海は実家へ行っていたといった言い訳をするだろう。
待ち伏せのような事をしても、自分が虚しくなるだけだと思い、スマホを取り出してラバープレイ専門の店を検索し始めた。
ラバープレイを自分も体感してみようと思ったから。
検索の結果出て来たのは、自宅のある最寄り駅から3駅向こうの駅前にあるお店。
値段も手頃でだった。
最寄り駅をやり過ごすと、3駅向こうにあるラバープレイ専門店へと向かった。
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