7話 ゾンビは、揺れてる葉っぱと一緒なの
「わかる?」
四季は尋ねる。
「……?」
わからない。
「僕のお父さんとか、四季……さんのお母さんとかもってことですか?」
意地の悪い質問かもしれない。鬼の首を取ったような指摘だ、と自分で思った。
「そうだよ」
彼女の答えはそれだけだった。
僕の父親も彼女の母親もゾンビだけど、僕と四季は違う。
そこにはつじつま合わせも理屈もなくて、ただそうだからそうなんだ、という言い方だった。
「だめ? 現は頭がいいんだね、本当に小五?」
彼女はからかうように僕に笑う。
話に集中できない。彼女の笑顔に惹かれていた。
決して、柔らかい笑顔ではない。どちらかといえば、冷たい。
それでも、四季は僕の警戒心をとき、いい関係を築こうと一生懸命に笑ってくれているように見えた。
それでも僕は目も合わせられず、「あ」とか「いや」とか意味のないの音を発するしかできなかった。
彼女を姉であると思うことは不可能だった。
「……」
互いに黙ってしまう。
風が吹いた。マンションの外の木の葉がすれ、ざわめく音がうるさく感じた。
「風って、なんで吹くんだと思う?」
四季は、風に遊ばれる髪をおさえながら、たずねてきた。
「……?」
急に話がとんで戸惑う。
緊張してのどが渇いた。今日はむし暑いのに、背中が冷たい。
「風はね、葉っぱを揺らすために吹くわけじゃない。ゾンビっていうのは、揺れてる葉っぱと一緒。私の言いたいこと、わかる?」
「……」
わからない。わかりたいけど、わからなかった。
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