第2話 レッド・赤月虎琉
この世のものとは思えないほどの美貌なのに、残念なイケメンの異名を持つこの男。
実は本当に普通の人間には見えない敵と戦っている————近くにいるとかなり危険な男である。
誰もいない場所に向かって戦いを挑んだり、どこも怪我をしているわけでもないのに左手に包帯を巻いていたりするので、重度な中二病を患っていると、普通の人たちには思われている。
本当は、彼の目の前には明確に敵がいて、左手には地球防衛軍太陽隊レッドの赤い
中二病に見えるかもしれないが、彼は本当に地球にとって敵である悪の組織ブラックリベリオンズという
もちろん、桃香にもそれらは全く見えていない。
姉の忠告通り、赤月には関わらない方がいいのだが、桃香には赤月が言っていることが全て本当のように思えてならなかった。
それに、もう一度あの綺麗すぎる顔を見たいという欲望が抑えきれなかった。
そしたら、見事なまでにブラックリベリオンズに取り憑かれてしまった。
「どうしてついてきたんだ!?」
赤月は桃香に問いかけたが、時すでに遅し。
ブラックリベリオンズは影のような大きな黒い
意識はあるのに、急に何かに口を押さえられ、桃香は話すこともできず、身動きも取れなくなってしまった。
まるで金縛りにでもあったかのように、ピクリとも動かない。
(なにこれ……どうなってるの!? 気持ち悪い)
その感覚があまりに気持ち悪くて、桃香の瞳には涙が浮かぶ。
ブラックリベリオンズ————彼らは影のように真っ黒で、どんな姿にもなれる地球外生命体。
この地球を征服しようと企んでいる悪の組織。
赤月はこの地球を守るため、秘密組織地球防衛軍太陽隊のレッド——つまり、隊長として常日頃行動している。
彼は今、左手の包帯をほどき、地球隊レッドの姿に変身しているのだが、この姿隊服も普通の人間には見えない。
はたから見ると、公園のど真ん中でめっちゃイケメンの学ランを着た中学生が左手の包帯をほどき、無言で立っている涙目のセーラー服の中学生と対峙している……という奇妙な光景である。
もう夕方なので公園を利用している子供達はみんな5時を知らせる音楽が鳴って帰ってしまったが、全く人がいないわけではない。
赤月の中二病はこの近所でも有名で、みんな「また残念なイケメンくんが何かしてる」と心の中で呟いてた。
桃香は、巻き込まれたかわいそうな子————だと思われている。
まぁ、実際に巻き込まれているのだが……
(動けないし……話せない……どうしよう…………怖い)
赤月のことが気になって、つい後をつけたのが悪かった。
昨日赤月が倒したブラックリベリオンズ。
その様子を見ていた他のブラックリベリオンズは、二日連続で桃香が赤月の近くにいたため、桃香を赤月の
桃香はただ赤月に一目惚れしたストーカーで、恋人でもなんでもない。
「————レッド、これを使え!」
「ブルー!?」
(えっ? なに? 誰?)
赤月が困っていると、桃香の背後からブルーが現れる。
桃香は動けないので、振り返ることができず、急に男の声が後ろからして驚いた。
ブルーと呼ばれたメガネの男は、赤月に謎の包みを投げて渡すと、すぐにその場から離れて公園から出た。
赤月はそれを見事にキャッチし、中に入っているものを取り出す。
中に入っていたのは、対ブラックリベリオンズ用の光線銃。
もちろん、桃香にはなにも見えていない。
袋を受け取り、その中から何か取り出したのはわかったが、赤月の手にはなにもないように見える。
「お嬢さん、目を閉じることはできるな?」
(目? うん、それなら……!)
なんだかわからなかったが、言われた通り桃香はぎゅっと目を閉じた。
「よし、俺がいいというまで、開けるんじゃないぞ?」
赤月は銃口をブラックリベリオンズに向ける。
「覚悟しろ! ブラックリベリオンズ!! サンライトスーパーペシャルハイパーフラアアアアッシュ!!」
(だ……ダッサっ!! なにその必殺技!!)
あまりのダサさに不安になったが、桃香に取り憑いていたブラックリベリオンズは光線銃から出た光を浴びて燃えるように消えて無くなった。
急に自由になった桃香は、バランスを崩して地面に倒れそうになる。
「きゃっ!!」
「危ない……!!」
赤月がとっさに手を伸ばし、桃香を抱きとめる。
「ふぅ……もう大丈夫だ。目を開けてごらん」
赤月の腕の中で、桃香は、言われた通り目を開ける。
(うわぁぁぁぁ……イケメンだぁぁ!!)
赤月の顔が近い。
「ん? おーい、お嬢さん? 大丈夫か?」
(ああ、なにこれ……私、死ぬのかな? もしかしてこれが、
あまりに近すぎて、桃香は興奮して気を失った。
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