第3話 地球防衛軍太陽隊秘密基地
「……それで、この子は誰なん?」
「さぁ……多分、新入生だと思うけど……同じ制服だし」
「いや、それは分かる。せやけど問題は————」
話し声が聞こえて、桃香が目を覚ます。
すると、桃香の顔を覗き込む美少女と美男子がいた。
「————なんでレッドがここに連れて来たかやろ……あ、起きた?」
「あ、本当だ」
美少女の方は、関西弁。
桃香は関西人に知り合いはいないが、なんとなく大阪というより京都っぽい感じがした。
それは多分、この美少女がピンクの着物を着ているせいだ。
着物=京都という方程式が桃香の中になんとなくあった。
肩まであるおかっぱ頭に帯と同じ黄色のリボン型のピン留めを一つ付けている。
美男子の方は、赤月とはまた違うイケメンで、センターパートのショートヘア。
三白眼で瞳の色がカラーコンタクトを入れているのか、少し緑ががっている。
背中に大きく太陽中学排球部と書かれた深緑のジャージを着ていた。
(……誰?)
どちらも桃香には見覚えのない顔で、自分が横になっているこの部屋も、どこだかさっぱりわからない。
ただ、窓や壁の感じから、校舎のどこかの教室だとは思った。
「私、レッド呼んでくるね」
「あぁ、頼んだでグリーン」
(レッド……? グリーン?)
グリーンと呼ばれた排球部員が出ていくと、関西弁の美少女はニコニコと微笑みながら桃香に話しかける。
「心配したんやで? 全然目ぇ覚さへんから、死んだかと思たわ」
「あの……ここはどこですか?」
「あぁ、生徒会室の隣や。ウチら地球防衛軍太陽隊の秘密基地」
「ち、地球防衛軍???」
「ん? え、なんなん? あんたもしかして、レッドから何も聞いてへんの?」
関西弁の美少女・
レッドがここへ連れてきたということは、当然知っているものだと思って、秘密組織の名前を言ってしまったのだ。
麟は地球防衛軍太陽隊のイエロー。
あの排球部の美男子は、グリーン・
ちなみに、美少女と美男子に見えるが、関西弁の美少女の麟の性別は男で、排球部の美男子の性別は女である。
二人は隊長であるレッド・赤月に桃香が起きたら教えるように言われており、本人はブルーと一緒に今地球防衛軍の本部と通信会議中。
ブラックリベリオンズに襲われた後、赤月に助けられたがすぐに赤月のイケメンすぎる顔に気絶した桃香は、まったく何も知らない。
「なんや、やってしもた……。これ絶対ブルーに怒られるパターンやん」
麟は頭を抱えている。
桃香はわけがわからないまま、とりあえず上体を起こして周りを見る。
赤いソファーとその横に白いローテーブル、白い天井には蛍光灯。
部屋の中央には机が四つ向かい合って並んでいる。
ドアの横には、何も入っていない空っぽの棚。
窓の外はもう真っ暗だった。
「何も聞いてへんかった……て、ことにできへんかな?」
「いや、そう言われましても……というか、あなたは誰なんですか?」
「ウチ? ウチは2年の廣金麟————ごっつい名前やけど、麟ちゃんて気軽に呼んでな。で、あんたは? 見たことない顔やし、1年生か?」
「は、はい。1年1組の姫宮桃香です」
「えらいかわいい名前やな。ほな、モモちゃん」
「は、はい!」
(いきなりあだ名で呼ばれた……)
「話してしもたからには、この際全部教えちゃる。今目ぇ覚ます前に、何が起きたか……覚えとる?」
「は、はい。なんかその……金縛りみたいに急に動けなくなって……そしたら、赤月先輩がクソダサい必殺技みたいなので助けてくれてました」
「クソダサ……————っせやな、それについてはウチも同意や。あの人、顔はめちゃくちゃイケメンやけど、ネーミングセンスもファッションセンスもゼロやねん。この前なんて、遊園地やってゆーてるのにジャージと首元だるだるのTシャツで来よったし……しかも白い靴下に下駄やで? ほんまビックリしたわ」
「そ、そうなんですね」
(なにそれ、赤月先輩かわいい)
麟はなぜか今はどうでもいい赤月のダサいファンションについてベラペラとマシンガンのように話し始める。
桃香が今知りたいのは、自分の身に何が起こったのかと、赤月が戦っているあれは一体なんだったのか————だったのだが……
「それでな、そん時ゆーたんや。あんた、そこに愛はあるんか?って。地球守るだけじゃなくて、ファッションにも愛を注げやボケ!と思て、CMみたいなことゆーてしもた」
「はぁ……」
(どうしよう……この人、すごい喋る)
桃香が困っていると、バーンと大きく音を立ててドアが開いた。
「気がついたんだね、お嬢さん!」
「あ……赤月先輩!?」
赤月は秘密基地に入るなり、一直線に桃香の元へ向かい、嬉しそうにぎゅーっと桃香を抱きしめた。
(ふええええええええっ!?)
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