第13話 作戦阻止会議

今日も昨日と同じように僕らはダンジョンには行かずに、僕の部屋にいた。

今日はカトラス関係ではなく作戦会議をするためである。


その内容は以前目撃したハケスとレノンの話の内容についてである。

俺は椅子に、アストレアは小さくなって机に座ってアップルパイを食べながら向き合って話を始めた。


「話の内容から考えると、ハケスとレノンはサモンズを懲らしめようとしている。」

「はい、そしておそらく殺そうとしていますね。」

「だろうな。ドーラの店で買ったものがあまりにもすごいものだったからな。」

「はい、まさか店にあんなものまで売っているなんてドーラさんのお店は何なんでしょうか。」


彼ら2人がドーラの店で買ったものは二種類だった。


一つ目はウィングだ。

その名の通り自由に空を飛ぶための道具である。この世界では空を飛ぶことは、パートナーの力を借りることでしか不可能だと思われているため、これだけでもとても強力なものだ。


だが、彼ら2人がサモンズを殺害すると僕とアストレアが考えている理由はもう一つの魔道具が原因である。


それは、グレイルだ。


グレイルとは爆弾の一種でカトラスと同様、血を垂らすことでその使用者の好きなタイミングで爆発できる爆弾であり、威力もとてつもなく強く、周り半径一キロ圏内を吹き飛ばせるとドーラが言っていた。


どうしてそんなもの売ってんだか。


「どうして、友達であるサモンズさん?を彼らは殺そうとしているのでしょうか。」


アストレアはお母さん特製アップルパイを食べながら僕に聞いてくる。


「それはたぶん、嫉妬だろう。」

「ふぃふっほ?」


アップルパイを口に入れたまましゃべったためほとんど聞き取れなかったが言いたいことは分かったため僕は話を続ける。


「あいつらはおそらくサモンズとずっと一緒に行動していたんだろう。だけど、サモンズが赤いバッジをもらったことでサモンズだけがちやほやされ始めた。恐らくそこからアイツの態度も大きくなったんだろう。それに対する嫉妬心と苛立ちだろうな。」

「なるほど。それで、どうするのですか。」

「その計画を止めようと思う。」

「どうしてですか。あなたを仮にでも殺そうとした人たちですよ?」


僕が止めようとしていると伝えると、アストレアは目を大きく開いて聞いてくる。

尚、アップルパイを口に頬張るために口も大きく開いている。


「あいつだけが殺されるなら止めようとはしないよ。でも、今回グレイルが使われるとするなら、この町の人たちだって殺されてしまうからそれは阻止しないと。」

「ミドル様はお優しいのですね。」


そんな話をしていると、ダンダンと階段を上る音が聞こえて、母さんが部屋に入ってきた。


「なになに、2人だけの秘密のお話?お母さんも入れてよ〜。」

「いいよ、母さんは。」

「そんな冷たいこと言わないでよ〜。」


深刻な話をしているとはつゆ知らず、呑気に話に入ろうとしてくる。


「お母様も最近、お忙しそうですが何かあったんですか?」

「そうなのよ〜。アストレアちゃんはよく見てるわね〜。1週間後に町でお祭りがあるでしょう?それに、お母さんのアップルパイの出店を出してみようと思ってるの〜。」

「出店!?お店でお母様のアップルパイが食べられるのですか!?必ず行きます!」

「ありがとう〜。」

「ちょっと待って、母さん今、1週間って言った?」

「え、ええ。」


僕がいきなり声を大きくして、母さんに問い詰め、母さんは驚きながらも頷く。

僕は一気にコップに入れられた飲み物を飲み干した。


「母さん、飲み物無くなったから入れてきて欲しいな。」

「あ、私もお願いします。」


俺の言葉と行動で察したのかアストレアも同じようにすると、母さんは後ろ髪を引かれながら部屋を出ていった。


「どうする、アストレア。」

「そうですね。1週間後と言えば彼らの作戦の人丁度一致しますね。」

「それに、お祭りを中止にすることは出来ないだろうし。」

「お母様のアップルパイを町の人達に是非味わって欲しいです。どうにか作戦を阻止しないと。」

「そうなんだよ。どうにか彼らを騙して、計画を阻止できればいいんだけど、、。」



僕はしばらく考え続けた。


そして、一つ可能性を見つけ出した。


「アストレア、ちょっとダンジョンに行くぞ!」

「ダンジョンですか?」

「ああ、ちょっとお前で試したいことが出来た。」


僕らは急いで部屋を出ていく。


「あら、飲み物は〜?」

「いらない!」







そう言って、僕らはダンジョンの6階層に来た。


「どうして6階層に?この前はもっと先に行きましたよね?」

「それはな・・・・・。」


不思議がるアストレアに僕は考えを伝える。


「なるほど。ミドル様は天才ですね。それはわたくし可能でございます!!」


それからは、僕の考えた作戦のために、五日間ひたすらアストレアを鍛え続けた。






そしてお祭りの日、当日を迎えた。

祭りはたくさんのテイマーたちで賑わっていた。


「アストレア、いよいよだ。準備はいいか?」

「はい、ミドル様。」

「今日までの特訓の成果見せてやれ。行くぞ!!」

「はい!!」


こうして、僕らのサモンズ殺害阻止計画が開幕した。

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