第10話 モフモフ変化

僕は初回のダンジョン探索を無事に終えた翌日も、相変わらずダンジョン探索に来ていた。

今日は前回の階層の先である、6階層に来ていた。


6階層は獣系の魔物であり獣系はそれぞれの毛皮をドロップするらしい。

俺は新しい場所ということで少しワクワクして、ダンジョンをしばらく歩き回ったが魔物の魔の字も見当たらない。


「全然魔物とエンカウントしませんね。」

「そうだな。」


アストレアも退屈そうにしながら、俺の後を着いてきている。


「あっ、何か落ちてますよ~。」


アストレアはそう言って目に入った、きらりと光る地面に落ちている何かに近づいていく。


が次の瞬間、アストレアの足元の床がなくなり、アストレアの姿が一瞬で見えなくなってしまった。


「いやぁあぁぁ~。」

「アストレア!」


僕はその穴に近づき覗き込むと、アストレアがすぐそこで仰向けに大の字になっていた。穴は深くなく落とし穴のようなものだったためアストレアにはなんともなかったようだ。


「あのな~アストレア、油断するなと言ったはずだぞ。」

「もうしわけございませ~ん。」


そう言いながらアストレアを穴から引き上げていると、どこかから不思議で不気味な笑い声が聞こえてきた。



コンココン、コンココン



僕は周囲を見渡して見るが、周りには何も見えない。


「ミドル様、目では何も見えませんが、周囲からいくつもの魔力を感じます。」


アストレアもその声らしきものに気がついたらしくそんな事を言ってきた。


「何体ぐらいだ?」

「7体ほどです。」

「そうか、倒せそうか?」

「正確な場所が分からないので、一度にすべては無理ですが、半分ほどは倒せそうです。」


そう言いながら、アストレアは右手で指を鳴らす構えをする。


「あれか。やっていいぞ。」

「はい。」


僕がそう言うと、アストレアは”パチンッ”と鳴らした。


するとその瞬間、魔物の倒れる音が周りからいくつも聞こえてきた。


そして、倒しきれずに生き残った魔物が姿を現した。


その魔物はフォクスィーだった。


フォクスィーは幻術を使うキツネ型モンスターで悪戯好きな半面、襲われるとパニックになる。かなりのモフモフ具合の魔物である。


情報通り、フォクスィーは目を赤くし、狂ったように僕らにとびかかってくる。


「ミドル様は躱すことに専念してください。攻撃はわたくしがいたします。」

「おう、任せた。」


僕はアストレアに言われた通り攻撃を躱すことに専念した。


そして、アストレアは無駄のない動きで次々とフォクスィーを倒していって、数十秒足らずでフォクスィーは全滅した。


いくつかドロップしたフォクスィーのドロップ品である毛皮を回収する。


「幻影を使うモンスターだったから見えなかったのか。」

「そうですね。私がもっと注意すべきでした。」

「そんなに自分を責めないで。責任転嫁はアストレアの専売特許じゃないか。アストレアのミスは僕のミス。それに、お前は十分働いてくれているよ。」

「ミドル様。ありがとうごじゃいます〜。」


俺の言葉に目を涙ぐませながらそう行ってきた。


「よし、敵が分かれば後は簡単だ。どんどん倒していくよ!」

「はい!」



そう言って僕らは、ダンジョン内のフォクスィーを狩りまくり、ドロップ品も数えきれないほどになり帰ろうかと思った頃だった。




「ミドル様、私のレベルが5に上がり、新しいスキルを覚えました。」

「おお、そうか。結構魔物も狩ったしな。何ができるようになったんだ?」

変化へんげができるようになりました。」

「へんげ?」


僕がそう聞き返すと、アストレアの姿がみるみる変わっていき、見覚えのある形になった。


「それは、サモンズのパートナーのイーグルじゃないか。」

「はい、そうです。」

「すごいなー。」


僕はイーグルの形になったアストレアを観察する。


「一度見たもので、私よりもランクの低いものなら何にでも変化できるようです。」

「見ただけで、なれるのか。役に立ちそうなスキルだね。」


そう言いながらアストレアはまた形を変え始め、今度はさっきまで戦ったフォクスィーの形になった。


それを見た僕は、フォクスィーを抱きかかえそのモフモフの体に顔を埋める。


「パートナーだけじゃなくて、魔物にもなれるのか。すごいな~。モフモフのだ〜。」

「ミドル様、やめてください。くすぐったいです。」


僕はそんな風に嫌がるアストレアを無視して、自分の顔をフォクスィーのモフモフの体に埋め続ける。


すると、アストレアは遂に痺れを切らせて


「やめてください!」


と声を上げ、また変化をしていき今度はゴートテイマーのパートナーであるグリフォンになった。

その反動で僕は体を持ち上げられる。


「分かった、分かったか。さすがにその姿になるのはやめような。誰かに見られたら色々問題になっちゃうから。」


僕がそう言うとアストレアは元の姿に戻った。


「ミドル様が悪いんですよ。」

「すまんすまん。」

「本当に思ってるんでしょうか。」

「よし、冒険ギルドにドロップ品を提出して帰るか。」


疑いの目を向けてきたアストレアの質問に僕は答えることはせず、ギルドに向かって歩き始めた。


「あっ。今無視しましたね〜。もうフォクスィーには変化しませんからね!」

「それは勘弁。」

「嫌です!」


そんな風に言い合いながら、僕らはダンジョンを後にしたのだった。




――――――――――――



皆さん、いつも『「パートナー無し」と告げられたけど、色々あってSランクのパートナーが出来たのでテイマーの頂点「ゴートテイマー」を目指し直します。』を読んでいただきありがとうございます。


皆さんの応援もあり、10話を迎えることが出来ました。


面白い!続きが読みたい!アストレアちゃん可愛い!!など思った方はぜひ、いいね、コメントや★★★を残していただけると嬉しいです。


これからも応援よろしくお願いします!


どうもみっちゃんでした!(^^)!

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