第8話 初ダンジョン探索
ダンジョンの騒動から3日が経ち、ほとぼりも覚め始めた今日、僕はアストレアと一緒に新しいダンジョンに向かっていた。
冒険ギルドの調査も終わったらしく今日からダンジョンに入れるようになるらしいからだ。
ちなみに、僕は念のため昨日の母さんとの散歩で買ってもらったローブを身にまとい顔を出来るだけ隠せる格好で、アストレアもローブの中に隠れてもらっている。
ダンジョンに到着すると、既に何人ものテイマーたちが、ダンジョンに入れるのを今か今かと待っていた。
少し時間が経ち、またテイマーが増えた頃、ダンジョンの入り口の前にゴートテイマーが現れた。
その隣には、何故かサモンズもいた。
「えー、皆さん。お待たせいたしました。まず、先日起きたダンジョンの生まれ変わりは皆さんご存じの通り、このサモンズ少年が最下層を攻略したことで起こったことだと判明しました。よって、少年には赤いバッジを贈呈しました。」
コスモスのこの言葉を聞き聞いていた人の拍手が一斉にこの場に鳴り響く。
サモンズはその音を目を瞑りながら聞き、堂々と胸を張り笑顔でその場に立っていた。
「まだまだ若いテイマーが活躍し始め、この世界変わり始めているのかもしれませんね。皆さんも、このサモンズ少年に負けないよう精進していってください。それでは、新しいダンジョンの安全が確認されたので本日からダンジョンの入場を再開したいと思います。」
それからすぐに、ダンジョンの受付には列ができ、次々とダンジョンへ向かってテイマーたちが入っていく。
僕もサモンズにばれない様に人の流れに続きダンジョンへ入っていった。
僕らテイマーがダンジョンで戦う理由は二つある。
一つ目は最下層を攻略し”赤いバッジ”をもらうためである。
二つ目は魔物を討伐すると稀に落ちるドロップ品を冒険者ギルドに提出することでお金と冒険者の実績を上げることで”緑のバッジ”をもらうためである。
どちらもゴートテイマーになるためということだ。
僕とアストレアはダンジョンに入るとまず人気のない場所へ向かった。
すると、すぐ二体のスライムが現れた。
「アストレア出てきていいよ。」
僕はアストレアを呼び出し、彼女も元のサイズに戻った。
「アストレア、君が強いことはもう十分わかっているが、今回はテイマーとパートナーとしての初めてのバトルだ。気を引き締めて行くよ!!」
「はい!」
アストレアがどういうことができるのかまだ何も把握していないため、まずは手始めにと指示を出してみる。
「アストレア、お前の出来ることが分からないから、まず、あいつらを倒せ!」
「はい!」
僕の指示がいけなかったのか、それとも彼女が強すぎたのか。
彼女は、指を”パチンッ”と鳴らすとスライムたちは跡形もなく消し飛んだ。
「ミドル様、倒しました!!」
そう言いながら彼女は褒めてほしそうにこちらを見てくる。
「あのな~アストレア。君が強いのは認めるよ。でもそういうことじゃないんだよ、そういうことじゃ。」
僕はため息を一つついた。
それに対してアストレアはキョトンとした顔をしていた。
「次に行くぞ。あと、今の攻撃は今日は禁止な。」
「はい。」
彼女はしゅんとした顔で返事をし、僕の後をついて歩いた。
奥の方に進むと少し広い場所に着いた。
すると、ゴブリンの群れに遭遇した。数は大体10ぐらいだろう。
「アストレア、その腰の剣って扱えるのか?」
「はい、扱えますがあまり得意ではありません。」
「飾りなのか。」
「ミドル様酷いです!飾りなんかじゃありません!あいつらでそれを証明してみせます。」
「そうか、じゃあ今回はその剣を使って倒してもらおうか。」
「笑いましたね。見ていてくださいよ。」
僕がそう言うと、彼女は少し頬を膨らませながらも、剣を鞘から抜き、構える。
彼女と同様、剣もとても美しい剣だった。
先に仕掛けてきたのはゴブリンの方だった。
五体のゴブリンがアストレアに向かって飛び込んでくる。
アストレアもゴブリンへ向かい走って行く。
剣を左から右へ振り、先ず二体。
そのまま今度は右から左へ振り戻し、また二体をしとめる。
そして、正面からのゴブリンの攻撃をジャンプで躱し、その落下の勢いを使い
ゴブリンの頭に剣を突き刺し、五体。
ここまで実に三秒ほどだった。
その光景を見たほかのゴブリンたちは恐れをなし逃げて行った。
が、僕の背後から岩の崩れる音が聞こえ振り返る。
すると、先ほどのアストレアのように剣を僕に向けて飛んでくるゴブリンがいた。
「ミドル様!!」
アストレアも気づくが遠すぎて間に合わないようだ。
僕はまた死を覚悟した。
が、次の瞬間僕の背後から僕の左耳の横をかすめ、何かが飛んでいく。
それは、ゴブリンの剣を持っている右手を吹き飛ばした。
そして、そのゴブリンは消えていき、僕はそれを見て尻もちを着いた。
「ミドル様!!お怪我はありませんか!?」
アストレアが駆け寄って心配してくる。
「申し訳ありません。油断してしまいました。」
「いや、助かったよ。でもな、剣を投げるのはちょっと危ないからやめような。」
そう、飛んできたのはアストレアの投げた剣だった。
「いいじゃないですか。あれしか思いつかなかったんですもの。」
「今回は助けられたし、大目に見てやるが僕に当たったら僕が死んでたぞ。」
「安心してください。ミドル様には死んでも当てませんから。」
「その自信はどっから来るんだか。」
しかし、パートナーだけじゃなくテイマー自身も何か身を守る手段を覚えなくてはと身に染みて実感した戦闘となったのだった。
「そういえば、わたくし今のでレベルが上がりました。」
「レベル?」
「はい。Sランクにだけあるもので、モンスターを一定数倒すことでレベルが上がり、基本能力が少し上昇し、いくつか上がると出来ることが増えるようになります。今回は何も増えませんでしたが。」
「そんなものがあるのか。」
こいつはこれ以上強くなるのかと思いぞっとした。
「またレベルアップしたら伝えますね。ちなみに、レベルは100が限界です。」
「なるほど。分かった。」
新しい目標や知識が続々と出てくるダンジョン探索を僕達は続けていった。
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