第7話 楽しい家族会議
サモンズに全ての功績を擦り付けた次の日、僕はお母さんと街を一緒に散歩していた。街中には常にいくつもの店や、屋台が並んで賑わっている。
アストレアは母さんに気づかれないように小さくなり胸ポケットに入っていた。
「散歩日和のいい天気だわ!欲しいものあったら何でも言いなさいよ?お母さん、奮発してあげるからね。」
「うん!」
俺を元気づけようとする母さんに少しアストレアの存在を隠していることがどこか引っかかる。
そんな話をしていると、道の先に大きな人だかりができているのを見つけた。
「あれ何かしら?行ってみましょう!」
お母さんもその人だかりに気づいたらしく、僕の手を引っ張りその人だかりまで連れて行く。
人だかりに近づくにつれて、会話の内容が聞こえてくる。
「赤色バッジを持ってるやつがいる!?」
「あのダンジョン攻略したやつが名乗り出たのか!?」
「まだ学園に通ってない13歳だってよ。」
「私と同い年の子だって。」
そんなことが聞こえ、僕はその人だかりの中心に目を向けるとそこには予想した通り、計画通りサモンズのやつが立っていた。
彼はちやほやされ、まんざらでもない顔をしている。
「あの子、ミドルと同い年でもう赤色バッジをもらったんだって!すごいわね~。」
「そうだね。」
お母さんも何事か理解し少し興奮気味に僕に言ってくる。そんな母を軽く流しつつ、僕はサモンズをじっと眺めていた。
そして、あいつを見ているとあの時のことが蘇ってくる。
”「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」”
怒りがふつふつと湧き上がってくが、サモンズのおかげでパートナーと契約出来たという感謝の念も少しだが感じた。
そんな時、一瞬サモンズと目が合ってしまった気がした。
僕はとっさに目をそらし隠れ、
「お母さん、買いたいもの見つけたから買いに行こ。」
そう言って、僕らはこの場を去った。
それからは、たくさん買い物をした。
途中、アストレアがアップルパイを買いたいと俺の体中を擽り回って、駄々をこねてきたので買ってやったが、お母さんの作ったアップルパイじゃないとダメらしく僕に擦り付けてきた。
こいつは擦り付けるプロなのかと思いながらそれを食べたが、案外美味しかった。
家に到着する目前、僕はお母さんに大事な話があると告げた。
すると、
「家でお父さんも入れてゆっくり話しましょ。」
そう、優しい笑顔で言って家に帰った。
そして、隣り合わせにお父さんとお母さんが座り、向き合って僕が座り重々しい空気で家族会議が始まる。
「大事な話があるそうじゃないか。」
「うん。実は、・・・。」
「ダンジョン攻略したのは僕なんだ!!」
僕は勇気を振り絞り、その言葉を口にする。しかし、どちらも黙ったままだった。
続きを話しなさい、そう言っているように感じた。
そこから、僕はこれまで起きたことをすべて事細かに話した。
パートナーなしと告げられたこと、サモンズに冒険に誘われたが落とされたこと、
アストレアも紹介し、彼女が新しいパートナーだということも。
それを両親は真剣に聞いてくれた。
「すごいじゃないか!さすが俺の子供だ!!父さんは誇らしいぞ。」
「そうよ。パートナーがいたんだからもっと楽しく話さないと!母さんてっきり、悲しませないようにミドルの空元気なのかと思ってたわ。」
今までこのことを共有できる人もいなかったので、僕はその言葉にとても救われた。
僕は安心したのか、息を深く吐いた。かえってそれが内側に溜まっているものも一緒に押し出したのか、涙があふれ出た。
それを見た両親は僕を抱きしめてきた。
2人の胸の中で僕はしばらく泣き続けた。
それからは仲良く一緒にご飯を食べた。アストレアには母さん特製アップルパイが用意され、とても喜んで食べていた。
「これからはどうするんだ?」
ご飯を食べながら、お父さんがそう尋ねてくる。
「来年にテレジア学園に入学しようと思う。それまでは、学園入試のためにアストレアと一緒にダンジョンで冒険するつもりだよ。それで、ゴートテイマーになる!」
「そうか。頑張れよ。」
「お母さん、ミドルがまた子供の時みたいにそう言ってくれて嬉しい。応援するわ。」
「うん!ありがとう。」
真実を打ち明け、僕の心は軽くなった。
僕のゴートテイマーへの道はまだ始まったばかりだ。
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