錬金術師曰く、軌跡は深い檸檬の様

キャロ

Prologue

Prologue

ーこの世界はどうせモノクロだと思っていた。


灰色の高い建物がお行儀よく並んでいるこの街の隙間で生きている私たちは、この街に住んでいる人からはきっと都合のいい道具としか見られていないのだろう。


視界の端で揺れる私の淡紅色の髪だって、神を騙る悪魔によって最悪の贈り物にされた。この髪のせいで、悪魔のせいで私は故郷から離れなきゃいけなくなったんだ。


ここからだと晴れが曇りかも分からないような空の色も思い出したくないほどに焼き付いている。


硬く、白くなったパンを、空腹を誤魔化すように少しずつ口に含む。

今日を生きるために

愛してくれた親にもう一度会うために


それなのに貴重な水分を全部かっさらっていく。飲み込む度に思い出す首輪の感触を、泣きたくなる気持ちと一緒に全部噛んで誤魔化さないと


あぁ、いっそこの髪が故郷のみんなみたいに普通の色だったら、この街に辿り着かなければ幸せに生きられたのかもしれない。

まだ故郷に居続けた方が幸せに死ねたのかもしれない。


そんなことを考える度に

ー本当に、吐き気がする。







そんな日々を繰り返している私を救ってくれた天使がいた。

現れた白金の彼女は私の視界を、世界を、決してキレイとは言えないけれど、温かさで包み込むように、


五感全てで感じるような、彩りをくれたんだ。


後に彼女は「王都の錬金術師」と名乗った。

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