剣と魔導書、あと剣も

XsINs‐さいんず

侵色

記憶ヒトを蝕む白の瘴気』


『発見者には通告の義務』



 中途半端なタイミングで時刊が変わりおった。一時間おきに内容が変化するけども、前からそんなに経ってないが……速報かい。



「しかしパッとしねぇの……華がありゃあ、もう少し」


「あ、開いてる。おっちゃんおっちゃーん」


「叫ぶな何回も。ボケたジイさんにゃあ優しく声をかけんだよ嬢ちゃん」



 最新のニュースに目を通してる暇があるなら、それなりの都会で店なんか開かん。武器やら魔導具やらを取り扱ってる身だ、油断は事件に直結しよる。



「おっちゃん。剣とまどーしょ? あと剣もおねがい」



 この嬢ちゃんは剣士の孫だったか。珍しい、本だなんて。


 腰を気にかけながらする仕事は楽なもんじゃねえ。特にウチのお得意サンは倉庫でイビキ掻いとるモンばっか頼みやがりなのが多い。ここが他の無能よか品揃え抜群ってのはオレもわかっとるが、そんな他にないもんか?



「おらよ、魔導書っつーたらこれが基本やしまあこれやろ。剣は二本か? どんなん欲しい?」


「ひとつでいいよ、うーんとたかいの!」


「おーそうかそうか、ならコイツな。キレーな刃やろ? 血も錆びつかん優秀なヤツや。おっちゃんのために来てくれるかわええ嬢ちゃんには半額でやるわい」


「ままのためだけどね、ありがとー!」



 さっさと帰る嬢ちゃんの背中を見ると、なーんか忘れてる気が。まあ良し。



「おじちゃん! おじちゃん! 娘見なかった!?」


「おーナッちゃん、珍しい。しっかし元気やの。んで娘言うとあれか、いつもおつかいに来とる嬢ちゃん。今日は来とらんなあ」


「あの子ったらどこに……おじちゃんは見なかったかしら?」


「見とらん言うたわ」


「え、ええ。そう、そうね。ごめんなさい」


「それにしても今日は明るいなあ外。明るいってか、白いわ」



 いつの間にか時刊が変わっとる。


 白の瘴気、もーちょっと惹かれるような、華がありゃあなあ。魅力さえあればな、仕事サボって見るけどもよ。

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