第5話 選ばれし者①

 大神が告げたクロスナイトと共に戦う者達とは誰なのか。大神は選んだ者には星の加護を付け、特別な力を使えるようにしていた。その一人目がナスタリージャ・マンレーン。彼女はエイリーンの母、フローレンの親友であるキャスティーラ・マンレーンの一人娘である。キャスティーラはフローレンがエイリーンを出産してまもなくナスタリージャを身籠っていたことに気付いた。親友の異変に気付いたフローレンはキャスティーラを励まし、「二人で一緒に母親になろう。わたしの子もキャスの子もいずれは国に仕える子に育てよう。お互いに何かあったら子の後見をする。」と約束した。こうしてキャスティーラはナスタリージャを出産したが、ナスタリージャが3才になったとき、キャスティーラが病に倒れて急逝してしまった。フローレンは親友の死を悲しみ、約束した通りにナスタリージャを引き取り、エイリーンと共に育てた。ナスタリージャはフローレンのすすめで王宮魔術師の道を歩む。母のキャスティーラも凄腕の王宮魔術師で回復魔法も攻撃魔法も使いこなしていた。ナスタリージャもやはり凄腕の魔術師に成長し、更には自分で魔法を組み合わせる技術を持っていた。そして大神が彼女に与えたスキルがあった。それは巧みな索敵と交渉術。大神はナスタリージャにコストゥーラ教の本山に潜り込ませて様々な情報を引き出させる運命を与えたのだ。コストゥーラ教とフェラン王国の戦いは中々終息せず、フェラン国王のタルカニア3世は毎日頭を悩ませていた。そこで国王は大臣達や領主達と会議を重ね、優れた才能を持つ者達をコストゥーラ教の本山に潜り込ませて情報を集める作戦を採ることを決断した。コストゥーラ教との戦いは七年目に及んでいた。ナスタリージャが17歳になった時、ナスタリージャに王宮魔術師長のゼル・ゴルト公爵から呼び出しがかかった。ゴルト卿はナスタリージャに「お前にコストゥーラ教の本山に潜り込むように王命が降された。直ちに向かって任にあたるように。辛く苦しい重い任務をお前のような優れた者に与えなければならないのは心苦しいが、王国を守るためにも頼むぞ。」と言って「お前の為に用意した。」と様々な物を彼女に与えた。大神の加護がかかった服に靴、魔力が切れた時の為に投げナイフなどの簡単な武器、魔力と体力の回復薬を沢山。これらをマジックボックスに入れ、師長室を後にすると、後見のフローレンに事情を話した。フローレンは「こんな任務を与えるとは…。キャスティーラが生きていたら絶対許さなかったでしょう。しかし王命である以上はどうしようもありません。エイリーンには何も話さないで行きなさい。あの子が聞いたら何としてもお前を行かせないでしょうから。あの子にはお前はコストゥーラ教に惹かれて国を出てしまったと言っておくから。」と涙を流してナスタリージャを抱きしめた。翌朝早くナスタリージャはコストゥーラ教の本山に向かって出発した。本山で彼女がどのような行動をするのか。それはまた後での話になる。

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