女神像を目指して

「畜生っ!! 勇者の子孫の癖になんも出来ないじゃねーかよ、俺に特殊スキルとかないのか!? 漫画やアニメのヒーロー主人公だったらこんな時困らないんだろうなきっと、せめてメ○くらいは使えねーのかよ……!」


 自分で自分が情けなくなった。こんな奴が勇者の子孫だとか、まったくお話にならない。俺にはヒーローは向いていない。だからこんな時にクソ役に立たない、そこら辺のモブキャラで十分だ。


「クソッ、頼むから出て来るなよモンスターさんよぉ!」


 抜け道を上手く利用して人目を避けて通ると、教会まであと一歩という所で、誰かの助けを呼ぶ声が突如、聞こえた。牛みたいな姿をした凶悪なモンスターが斧を片手に、老女と幼い小さな子供に牙を向けた。


「あっ……!」


 そこで佇むと素早く物陰に隠れた。


 は、マジか……?


 おいおい勘弁してくれよ……!


 モンスターはいないと思っていたのに、ちゃっかりいやがったじゃねーか!


 クソ、しかも街人を襲いかかってる場面に俺は遭遇してしまった……!


 ガッデム……!


 ああ、クソ! 俺には無理だって……!


 武器も持っていない、丸腰でスキルも無い奴があんな怖そうな牛のモンスターを倒せる訳が無いじゃねーか……!


 頼むから俺に気付くなよ……!


 物陰に隠れながらやり過ごそうとした。老女は自分の身を挺して孫らしき子供を守った。まさに捨て身とも思える行動だった。とても俺には真似できない。


「どうか子のことだけは……!」


『おばあちゃん!』


「人間どもが我ら魔族の餌になるがいい! 絶望して喚け、そして死ね!」


 クッ……!


 俺は離れたところで見ておきながら、何もせず見ているだけだった。きっとこんな時にヒーローがいたら、颯爽と登場してあの二人をモンスターから助けるんだろうな。


 そう、颯爽と登場……。

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