女神像を目指して


 いや、俺には無理…――。

 俺はただの雑魚キャラでしかない。


魔法も特殊なスキルも、剣術も武術も、武器も、何も持っていない。 


 丸腰だ。


 そんな奴があれ一匹、楽勝に倒せるはずがないだろ……。


「クソッ!!」


 俺には勇敢に立ち向かう『勇気』も無ければ、雑魚ナメクジでしかないんだ。


 今までずっと引きニートの俺が、いきなり勇者になれる訳ないじゃないか……!!


 俺は絶対、カッコイイ漫画のヒーローになんかなれやしないんだ…――!


『キャアアアーーッ!!』


「なっ!?」


 その瞬間、凶悪な牛が鋭い斧を下に向けて降り降ろした。まさに、小さな孫を庇った老女を目の前で斬り捨てる勢いだった。


『勇者アルス様、助けてぇっ!!』


 少女は天に向かって大きく叫んだ。


「くっ――!」


 ああ、くそっ! 


 その名前を呼ぶんじゃねぇ……!


 呼ぶな!







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