女神像を目指して

 街人に狙われるという踏んだり蹴ったりの状況の中で。俺はオヤジの言葉を思い出して女神像を確認する為、近くに像は無かったかを必死に思い出した。


「街の中央広場にある女神像の所に行くのが一番手っ取り早いけど、きっとあそこには街人がいるはず。引き返すのは危険すぎる。他に近い場所を探すか……」


 そこで今いる方角を確認すると、近くに教会があったのを思い出した。昔、じいちゃんがミサで良く連れて行った教会だ。


 俺はミサには興味は無かったけど、じいちゃんが帰りに駄菓子を買ってくれたから、その駄菓子目的で一緒について行ったけど。確かにあの場所に大きな女神像があったのを思い出した。


「オルガノン教会か……。一応行ってみる価値はありそうだな」


そこで行先を決めると急いで教会へと向かった。俺は混乱が続く街中を人目を避けて、誰も使っていない抜け道を使った。ある程度土地勘があったので、自分にとっては楽な道だった。


 行く先々で街中は半壊した建物が多く、燃えている建物と人々の死体で溢れていた。たった僅かな時間で、一体どうしたらここまで出来るのか?俺は改めてモンスター共が、いかに凶悪かを思い知らされると息を呑んだ。


「……まったく冗談じゃないぜ、訳のわからない奴らに命を狙われて。その上、街人にも狙われるとか、そんなフザけた話しがあるか。もし奴らに捕まったらきっと殺されるに違いない。あいつらの目的が何であれ、俺にとっちゃ危機的状況には違いない」


 近場に転がっている死体を見ながら不意に呟くと周りを警戒して先に進んだ。幸いなことにモンスターの群れはこのエリアにはいなかった。奴らの事だから、きっと他のエリアに移動したんだと感じた。


「クソ、こんな所でモンスターに会いたくねぇ。今丸腰だし、俺には魔法のスキルも特殊なスキルも持ってないぞ。こんな事だったらもっと真面目にガキの頃から訓練しとけば良かった…――!」


 まさに『後悔後先に立たず』。自分でも、あの時諦めないで魔法や剣の訓練、頑張って続ければ良かったと言う心境になった。

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