刻々と変化する状況。

 大将らしき骸骨の言葉に街人は反応した。


「勇者の子孫……?」


「今あのモンスター、『勇者』って言ったぞ? まさかあの一家の事か?」


――!?


「ああ、きっとそうだ! あの一家だ! この街で勇者にまつわる名前がついたヤツはあいつしかいねぇ!」


 急に街人達は騒ぎ出すと俺の話をした。


「アルスの奴、あの疫病神! きっとこの騒ぎはあのクソ坊主に関係しているんだ! 何か知らんがこのままだとワシらが危ない! 奴らの要求を飲むしかない! あの疫病神のアルスのクソガキを早く捕まえろ!」


 一人が言い出すと街人達は次々に鍬を持った。まさに魔女狩りならぬ、勇者狩りと化した。俺はこの混乱の中で舌打ちをして歯軋りをした。


「このド糞野郎の街人どもめ、自分達が助かる為に勇者アルス様を生贄に捧げるつもりだな!? この薄情なしの裏切り者が…――!」


俺はそこで強く歯ぎしりをすると、必然的に街人と敵対関係になった。『やる』か『やられる』かの瀬戸際の間に、人としての理性はとっくに限界を越えていた。


『ええい、クソが! こんな所で無駄に殺られてたまるかってんだ! 勇者狩り上等、やれるもんならやってみやがれ糞どもぉ!』


「あっ! あんなところにヤツがいたぞ、今すぐ捕まえろ!」


『チィッ!』


 「逃がすな、骸骨様にアイツを献上だ! 勇者の血を引く子孫をひっ捕らえろ!」


 モンスターの群れから逃げまくってた人々は、急に態度を変えると一変して魔物達に寝返った。街人VS勇者の子孫の互いに命を賭けた鬼ごっこが始まった。俺は全員から命を狙われると、身の危険を感じて素早く逃げた。


「クソクソ! 捕まってたまるか! ぜってぇ、生き延びてやるぅ!!」


 ダッシュで細道に逃げると、地面にマンホールを見つけてそこに飛び込んだ。そして、下水道の中を駆け回った。


「畜生っ、クソっタレ! このまま黙って死んでたまるか! 無駄に犬死にしてたまるか! 俺を捕まえるなら捕まえてみやがれ糞どもがぁっ!」


 汚い下水道の中を無我夢中で走って爆走した。背後からは、鍬とたいまつを持った人々達が襲いかかった。まさにサバイバルホラーの様だった。お互いの命が懸かっているだけに、真剣そのものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る