刻々と変化する状況。

俺の可憐なるステルスモードは、敵に気づかれる事もなく順調に進行していた。周りでは街の人々が骸骨のモンスターに無双されながら斬り捨てられていた。近くでは悲鳴の嵐が木霊した。だが、俺はそんなことは少しも気にはを止めなかった。


 自分の身が一番だと欲望に正直で素直になる。まさに俺は典型的なドクズの人間だった。次々に人が死んでいるのに自分だけ助かりたいと願う。まさにドクズ野郎の極みだ。


 やばいモンスターに立ち向かう勇気は、俺には生憎持ち合わせていない。俺は物語りのヒーローなんかにはなれない。ヒーローが必要なら他からレンタルしてくれ。


俺は引きニートだから社交は苦手だ。そんな奴が誰かの為に剣を振って立ち向かう勇気は持ち合わせていない。あったらとっくに奴等に剣を向けて立ち向かってる。だからお前ら俺を恨むなよ。


 気配を消しながら地面に這いつくばって、体をクネクネさせながら確実に一歩 一歩と進んだ。近くに建物の間の抜け道を見つけた。俺はそこに向かおうと思いつくと、さらに用心して進んだ。すると近くで虐殺を楽しんでいた隊長らしき骸骨の騎士が大きな声で喋った。


「お前ら、勇者の子孫を出せ! この街に居るのは分かっているんだ! さもなくはこの街の全て住人を皆殺しにするぞ!」


 ッ――!?


 その言葉に一瞬、体が反応した。


 は? 今なんて? あいつ 今、何て言った?


 え、勇者の子孫……?


 は? マジか?


 俺の聞き間違いじゃない限り、あの骸骨はそう言った。『勇者の子孫を出せ』だって……?



 それってまさに……。

 

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