夢の終わり。

「はぁはぁ…。ミズコ銀行はまだ無事だったか。良かったぁ」


俺は息を切らしたまま 佇んで見上げた。自分の手には今、オヤジが残した通帳が握られていた。一体、銀行にはいくら入っているんだろう?


 リボンをつけた可愛らしいネコの絵柄が入った通帳を握り締めながら手が震えた。人は理性よりも欲望に素直だと思い知らされる。さっきは勢いつけて女神像がある場所に向かおうとしたのに、何故かここに来てしまった。『敗北』。『無念』。『欲望』『金』『衝動』この気持ちを文字で表すとしたら、この文字が今の俺には相応しい。自分がトンだクズ野郎だと思い知らされる。もしこれが漫画のヒーローで主人公だったら『善良』な道や、『まとも』な判断をするだろう。だが、生憎俺にはそれを持ち合わせていなかった。人間的にクズいから、通帳の中に入ってる金額がいくらか気になっているんだ…――!


「こっ、これで……。これでいくら課金出来るんだろ? 500連ガチャは出来るとしてそれがいくらかの問題だ。4万? いや、6万? 待て待て、もちつけ。深呼吸、深呼吸……!」


 突然、手にした大金を前に興奮すると呼吸も段々と荒くなってきた。銀行の入口の前で、深く深呼吸をした。

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