夢の終わり。

俺はケテェちゃんの通帳と印鑑が入ったビニール袋を方手に、燃やしたエロ本とエロビデオが煙に巻かれて空に舞い上がる光景を見ながら、切なる思いで涙した。


「なぁ、オヤジ……。確かにアンタの願いは俺が確かに引き受けたぞ。アンタの言う通りだった。あれは人様に遺品として見せるレベルじゃない。エロ本の『シコってどエロ・トゥナイト』とか『ドスケベ花園天国』とか、エロビデオの『パイパニック』とか『ハメリカン・ビューティー』とか『ハーメネーター』とか『スケパン刑事』とか『ボインを尋ねて3000発』とかオヤジはあんなタイトルが好みだったんだな。こんな事だったらオヤジが生きているうちに、親子水入らずでエロ本読み合ったり。AV鑑賞したかっぜ。そして、どういったジャンルが好きだとか。親子で男同士の会話がしたかったぜ……。でも、そんなアンタはもうこの世にいないんだな。父ちゃんよ。どうか安らかに眠れ…――」


そこで祈りを捧げると、二人の遺体に火をつけて燃やした。こんな状況だからまともに埋葬なんてできなかったけど、今は自分がやれることだけをした。


着ていた上着がボロボロになり。半壊した家から着れる服を探すと、母ちゃんの赤い半纏のちゃんちゃんこを見つけた。それを羽織ると、トイレにあった便所サンダルを履き、ケテェちゃんの通帳と印鑑が入ったビニール袋を手に家から飛び出して爆走した。


 街中は人の叫び声と炎の海だった。そして、燃え広がる光景の中で人々が重なって死んでいた。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。さっきまで、あんなに平和だったのに。一体、何が起きたのか俺には不明だった。


あの時、オヤジが言っていた女神像を確認する為に。像があった場所を思い出して思い当たる所に向かった。自分の手には今、通帳と印鑑を持っている。その欲望を堪えながら俺は人としての理性を必死に保った。


正直言ってぶっちゃけた話し、女神像なんてどうでもいいことだった。そんなことよりも、一刻も早く銀行かATMに駆け込みたい欲望の方が勝っていた。そんな事を思うクズ息子をオヤジやお袋は自分の息子だと誇らしく思えるのか。そう思うと走りながら涙が溢れた。





 父ちゃん、母ちゃん、ごめん……!




 やっぱり俺はクズだった。




 気がついたら俺は銀行の前に居た。







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