第102話 空の旅と日本政府の動向
準備を終えた俺は大阪の聖樹へと転移した。
そこが今ある聖樹の中で最も沖縄に近かったから。
そしてそこから成竜の飴によって巨大化したクーの背中に乗って空の旅を満喫することなった訳なのだが、
(速いな。この分なら思っていた以上に早く到着できそうだ)
景色が後ろに流れていく速度からして、車では出せない圧倒的な速度が出ているのは間違いない。
それこそ戦闘機とかそのレベルの速度が出ているのではないだろうか。
その上で、背中の上に乗っているこちらには風の影響がないのだから驚くしかない。
(透明化もしてるから普通の肉眼だけだと姿を捉えられないとか、もはや
自分のユニークスキルも大概だとは思うのだが、クーはそれを超えるレベルで反則だと思うのも無理ない性能と言わざるを得ないだろう。
流石は勇者一行というもの。
そしてだからこそ敵からしたら真っ先に排除したい対象となっている訳だ。
「この辺りでいいか。クー、悪いが一旦着陸してくれ」
「ギャー」
その勢いのまま一気に沖縄まで飛行するのが最速なのは分かっていたが、俺は幾つかの場所で着陸してもらう。
それは単純に転移マーカーを設置するためだ。
この後、沖縄に到着したらクーは茜の元に戻ることになり、代わりに叶恵を俺の転移で連れてくる予定となっている。
だが自分だけならともかく、他者を転移させるのは思っていた以上にMPが必要になるのだ。
だからこそ叶恵を連れていると大阪から沖縄へ転移するのにMPが足りない、となっては困る。
その問題を避けるために中継地点を設置しておくのが賢明というものだろう。
(今のところマーカーの設置限界を迎える様子もないし、設置しておけばおくだけ得だろうからな)
それにこうしておけば、今後に各地で急にダンジョンが現れた際でもその場所へ急行しやすくなるはず。
そういう意味でも転移マーカーを設置しておくのは大きな意味のある事なのだ。
『譲、政府の人間と一先ず話が付いたぞ』
そうして鹿児島に転移マーカーを設置し終わり、ここから沖縄まで一気に飛んでいこうとしたところで、そちら方面の対応を任せていた一鉄からそんな念話が入る。
『それは助かる。それでどうなった?』
『今は爺さんが総理大臣やその他大臣とかと直接話をしてるところだ。たぶん、この後にでも聖樹の中の居住区とかを案内することになるだろうよ』
それで聖樹の機能などを説明して、その重要性などを開示するとのこと。
それに付随して魔物の危険性なども周知していくそうだ。
日本政府からしたら聖樹の存在は未だに謎のままだ。
ただそれが聳え立った地域では魔物が消え去ることくらいしか分かっていることはないに等しい。
だからこそ軽々に聖樹を破壊するようなことにはなっていないようだが、それでも急に現れた謎の建造物に対して何もせずにいるという選択肢もあり得ない訳で、中に入れないながらも外から色々と調査をしていたそうだ。
『それにしてもよくこの短期間で、総理大臣なんて国のトップと直接交渉できるところまで持っていったな』
あるいは自衛隊の中でも話が分かる森重などが協力したのだろうか。
それでも難しいと思うのだが。
魔物が現れて各地で暴れているという緊急事態の中では、そういう人達も仕事に忙殺されていただろう。
そうでなくても危険性を考えれば、急に現れた正体不明の一個人と会うなどあり得ないと言っていいはず。
『そりゃあの爺さん、隙を突いて臨時政府とやらに俺と二人で乗り込んだんだからな』
『マジかよ。これまた随分と無茶したな』
『全くだ。俺も爺さんの良いように扱き使われたしよ』
確かに叡智の書があれば、いつなら警備に見つからずに忍び込めるか。
あるいは警備の隙なども知り得ることだろう。
もっと言えば、総理とかと交渉するに際でも相手が求める物が何なのかも分かる訳だ。
それでややこしい交渉も上手く成功させたのだろう。
条件さえ整えれば、答えを最初から分かってしまえる。
どんなに秘密裏に動いて隠していても無駄。
そんな相手に交渉事で勝てる訳がない訳で、たぶん政府側は先生の思惑通りに動かされたのだろうと思う。
『細かい話は後でするとして、とりあえずこっちの問題については俺と爺さんでどうにかするから心配するな。だからお前は全力で最後のダンジョンを攻略してくれ。その方が今後の話を進めるにしても助かるって爺さんも言ってたしよ』
『分かった。こっちも転移マーカー設置は終わったし、ここからは一気に沖縄までいくところだからな』
「ギャー!」
クーも早くしろと言わんばかりに鳴いている。
まあこれはたぶん早く仕事を終わらせて茜の元に戻りたいという気持ちの方が大きいのだろうけど。
(理由は何にせよ、協力してくれるのなら有難い限りだ)
そうして張り切っているクーのおかげもあってか、想像以上に早く沖縄まで到着する。
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